研究課題/領域番号 |
16K08208
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
坂根 稔康 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (50215638)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Neuromedin U / ペプチド / 肥満 / 鼻腔内投与 / 脳内送達 |
研究実績の概要 |
マウスを用いて、CPN-116の投与量を変化させて(25μg, 100μg, 250μg)、体重及び摂餌量に対する薬理活性の投与量依存性を確認した。投与量に依存して、体重増加と摂餌量が抑制された。次に、薬理効果がCPN-116の中枢作用であることを確認するために、 corticosteroneの血中濃度を指標に検討した。CPN-116の鼻腔内投与時にのみ、血中corticosterone濃度の増大が観察され、体重増加及び摂餌量の抑制が中枢のNeuromedin Type 2受容体を介した作用であることを確認した。 CPN-116のLC/MSによる測定条件を確定した後、静脈内投与後の体内動態と鼻腔内投与後の吸収動態、脳内移行動態を検討した。急速静脈内投与後の血液からの消失は予想通り速やかであった。CPN-116は血液中でthrombinにより分解されることが明らかになっているが、腎排泄に加えて、血中での分解が血液からの速やかな消失に寄与している可能性が示唆された。 鼻腔内投与後の吸収率は予想に反して、約20%と良好であった。当初の計画では、平成28年度にin vitro細胞層透過実験を行う予定であったが、研究の遅れのため、実施できていない。CPN-116の細胞層透過係数を得ることができれば、良好な吸収性の詳細が明らかになると考えている。一方、ホモジナイズに伴う細胞内タンパク分解酵素による分解のために、CPN-116の脳内濃度をLC/MSで測定することはできなかった。阻害剤カクテルの併用などにより、分解を抑える必要があり、今後の検討課題である。 そこで放射標識体を用いて、鼻腔内投与後の脳内移行動態を検討したところ、嗅球とそれに続く大脳前半部分でCPN-116由来の放射活性が高く、CPN-116が鼻腔から脳内へと効率よく移行していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定より若干の遅れが生じている。平成28年度にはin vitro細胞層透過実験を予定していたが、実施できていない。In vivo動物実験で得られた脳組織中のCPN-116濃度の測定に問題が生じたためである。CPN-116の脳内濃度を測定するためには、脳組織をホモジナイズして、CPN-116を脳から抽出する必要がある。ホモジナイズの際、細胞の破壊により、細胞内の各種タンパク分解酵素が大量に漏出し、CPN-116を分解したためと考えられる。各種の分解酵素阻害剤のカクテルの併用などで克服できると考えている。 In vitro細胞層透過実験も含めて、平成29年度の研究で遅れを取り戻すことは可能である。
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今後の研究の推進方策 |
鼻腔からの組織への移行性を評価できるin vitro実験系は存在せず、in vivo動物実験が基本である。ペプチドの場合、組織の試料中に類似の不純物が多いため、組織内濃度の測定が大きな問題と予想していた。LC/MSを用いることで、この問題を回避することは可能と考えていたが、細胞内タンパク分解酵素による速やかな分解という別の問題に直面した。タンパク分解酵素を阻害した条件で、組織のホモジナイズを行う必要があり、各種の分解酵素阻害剤のカクテルの併用などを考えている。 酵素阻害剤を用いても、分解を完全に回避できない可能性も考えられる。この場合に備えて、ホモジナイズを必要とせずに、個々の動物固体から脳内細胞外液濃度の経時変化を測定可能な微小透析法(microdialysis)などの新規実験方法の導入を考えている。微小透析法は透析膜を介して、脳の細胞外液中の薬物を採取できる方法であるが、分子量が大きいペプチドの場合、透析膜の透過性が低いため、回収率が悪い。この場合、ペプチドの測定感度に問題が生じるリスクがある。そこで、透析膜を介さずに直接、試料を回収する微小灌流法(microperfusion)の導入を検討するつもりである。さらに、定量感度の問題を回避するために、必要に応じて、共同利用機器のLC/MS/MSを利用する可能性も考慮している。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vivo動物実験で生じた組織内濃度の定量に関するトラブルのため、in vitro細胞層透過実験を実施できなかった。実施できなかったin vitro細胞層透過実験にかかる経費が残り、平成29年度への繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度にin vitro細胞層透過実験を実施し、繰り越し経費を使用する予定である。
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