研究課題/領域番号 |
16K08212
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
萩中 淳 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (20164759)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子認識 / 分析科学 / 薬学 |
研究実績の概要 |
前年度確立した新規分子インプリント法(修正沈殿重合法)を用いて、本年度は漢方薬中の親水性の薬理活性物質(配糖体)である、ルチンおよびナリンギンのアグリコンおよびグリコンに対する分子インプリントポリマー(MIP)を調製し、分子認識能を検討した。テンプレート分子にメタノールに溶解したルチン(ケルセチン3-O-ルチノシド)(ただし、ルチノースはラムノシル-(1→6)-グルコース)あるいはナリンギン(ナリンゲニン 7-O-ネオへスペリドシド)(ただし、ネオへスペリドシドはラムノシル-(1→2)-グルコース)、架橋剤にジビニルベンゼンを用い、アセトニトリル/トルエン溶液に溶解し、60 oC で 16 時間重合した。また、機能性モノマーとしてメタクリルアミド (MAM) および4-ビニルピリジン (4-VPY) を用い、比較のためにテンプレート分子を用いないで同一条件下で重合したノンインプリントポリマー (NIP) も調製した。得られた MIP または NIP をステンレス製カラムに充填し、保持能および分子認識能を移動相に酢酸を含むアセトニトリルを用いて、HILIC モードでHPLC により評価した。得られたMIPrutinは関連化合物[ケルセチン、ケルシトリン(ケルセチン3-O-ラムノシド)、イソケルシトリン(ケルセチン3-O-グルコシド)、ケンフェロール 3-O-ラムノシド、ケンフェロール3-O-グルコシド]に比し、ルチンを特異的に認識した。また、MIPnaringinは関連化合物[ナリゲニン、ヘスぺリジン、ヘスペレチン]に比し、ナリンギンを特異的に認識した。これらの結果は、修正沈殿重合法により配糖体に対するMIPの調製が可能であり、これら配糖体の認識には、形状認識とともに、MAM および 4-VPY とグリコンとの水素結合が重要な役割を果たしていると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新たに確立した新規分子インプリント法(修正沈殿重合法)では、親水性化合物を予め親水性溶媒であるメタノール、水あるいはジメチルスルホキシド等に溶解してテンプレート分子として用いる必要がある。前年度は、アルブチンおよびルチンを予めメタノールに溶解して調製したところ、優れた分子認識能を得ることができた。しかし、ジメチルスルホキシドに溶解した場合には分子認識能は得られなかった。今年度は、ルチンおよびナリンギンに対するMIPを予めメタノールに溶解して調製したところ、テンプレート分子に対して優れた分子認識能を得ることができた。しかし、メタノール以外の親水性溶媒を用いた調製法では良好な結果が得られていない。しかし、本年度、新たにナリンギンに対するMIPの調製が可能となったことから、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、予め溶解する親水性溶媒を混合溶媒として用いて、配糖体に対するMIPの調製を検討し、アルブチン、ルチンおよびナリンギン以外の配糖体に対するMIPの調製を検討する。さらに、疎水性の高い薬理活性物質(配糖体およびアグリコン)のMIPの調製を検討する予定である。また、本研究の最終目標である、漢方薬中の新規薬理活性物質のスクリーニングと同定を目指し、研究を推進して行く予定である。
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