研究課題
平成29年度までの研究で、ラマン分光法を用いたフェニトインの原薬一次粒子イメージングを行う手法を確立していた。しかしここまでの成果では、この手法がフェニトイン限定的なものである可能性が否めないので、平成30年度は他の薬物についても同様の手法が適用可能であることを示す必要があった。当初予定ではカルバマゼピンを扱う予定であったが、予想外の結晶多形の出現によりラマンスペクトルの解釈が困難となったため、結晶多形が報告されていないシロスタゾールを解析対象とした。フェニトインの場合と同様の手法で顕微ラマン分光法による原薬一次粒子イメージングを行ったところ、シロスタゾールでも良好な一次粒子形状が可視化できることがわかった。再結晶シロスタゾール原薬を乳鉢粉砕およびボールミル粉砕し、ふるいを用いて分級したものについて原薬一次粒子イメージングを行ったところ、乳鉢粉砕では分級レベルに応じた粒子径の一次粒子が得られていたのに対し、ボールミル粉砕では微小一次粒子の凝集塊が得られていた。これはフェニトインの場合と同様の結果であったが、この原薬を製剤化し溶出試験を行ったところ、フェニトインではどちらの粉砕方法でも溶出速度は同程度であったのに対し、シロスタゾールではボールミル粉砕のほうが有意に溶出速度は大きくなっていた。この結果から、フェニトインでは凝集塊径が溶出挙動に大きく寄与しているのに対し、シロスタゾールでは一次粒子径の影響が大きいことが分かった。この知見は本研究によって開発した原薬一次粒子イメージング法なくしては得られることのできなかったものであり、種々の薬物について原薬形状と溶出挙動を正確に理解する上で、研究期間全体を通した本研究の成果は大きな貢献を残したものであると考えられる。なお、本研究期間全体を総括した研究成果については、ICORS 2018(Jeju, Korea)にて口頭発表を行った。
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