研究課題/領域番号 |
16K08215
|
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
桐野 豊 徳島文理大学, 薬学部, 名誉教授 (10012668)
|
研究分担者 |
窪田 剛志 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (90412402)
岸本 泰司 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (90441592)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 学習と記憶 / タウタンパク質 / 神経原線維変化 / 遺伝子変異マウス / モリス水迷路試験 / 新奇物体探索試験 |
研究実績の概要 |
平成28年度に、rTg4510マウスのタウタンパク質過剰発現による学習障害発生時期は4か月齢以降に表出することが示された。そこで、4か月齢から2か月間ドキシサイクリン(DOX)を投与して変異タウ蛋白質遺伝子の発現を一時的に抑制したrTg4510マウス(6mo DOX-on)を用い、モリス水迷路試験および新奇物体探索試験を行った。その結果、海馬依存性学習である空間記憶、ならびに、海馬および前頭前皮質依存性学習である物体認識記憶において、DOXを投与しなかった群(6mo DOX-off)と比較して有意な学習の改善が認められた。一方、10か月齢のrTg4510マウス(10mo DOX-off)と、8か月齢から2か月間DOXを投与したrTg4510マウス (10mo DOX-on)において同様の実験を行ったところ、DOX-off、DOX-on両群において学習障害が認められ、6か月齢で認められたようなタウタンパク質の発現抑制による学習の改善は認められなかった。 続いて、rTg4510マウスの前頭前皮質におけるNFT形成をウエスタンブロッティングによって検出した。その結果、6mo DOX-on群では6mo DOX-off群と比較して、タウタンパク質発現量が26.6%減少した。一方、10mo DOX-on群では、10mo DOX-off群と比較してタウタンパク質の発現量が16.1%の減少が認められたが、6か月齢よりタウタンパク質の減少割合が低下した。 以上の結果より、タウタンパク質の発現量と物体認識記憶の障害には相関が認められることが明らかになった。10か月齢のrTg4510マウスでは、6か月齢と比較してタウタンパク質のクリアランスに障害がある可能性が考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
rTg4510マウスの繁殖にやや困難があり、必要な数のマウスを用意するのに時間がかかっている。マウス繁殖に詳しい研究者の助言も得て、課題解決に努めているところである。限られた数のマウスを用いて、これまで、学習障害発現とタウタンパク質の発現に相関が認められることを明らかにしてきた。次年度はマウスの数がそろったところで、瞬目反射条件付け学習について重点的に実験を行うことで、目標を達成できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、2、4、6、12か月齢のrTg4510マウスを対象に、学習・記憶試験を実施することとしていたが、4か月齢では学習障害が認められず、10か月齢では、2か月間タウ遺伝子を発現抑制しても改善しない強い学習障害が認められることから、4、6、10か月齢のrTg4510マウスについて優先的に瞬目反射条件付け実験を行うことで、研究の効率化を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子変異マウスの繁殖に若干の困難があり、実験がやや遅れているため、次年度使用額が生じた。次年度はマウスの数も揃って、実験を計画通りに実施できる見込みである。
|