研究課題/領域番号 |
16K08215
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
桐野 豊 徳島文理大学, 薬学部, 名誉教授 (10012668)
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研究分担者 |
窪田 剛志 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (90412402)
岸本 泰司 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (90441592)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 学習と記憶 / タウタンパク質 / 神経原線維変化 / 遺伝子変異マウス / モリス水迷路試験 / 新奇物体探索試験 |
研究実績の概要 |
本研究は、出生後に発現調節が可能な変異タウタンパク質遺伝子導入マウス(rTg4510マウス)を対象として、変異タウタンパク質による神経原線維変化(NFT)形成の時期とアルツハイマー病(AD)関連認知障害の特徴である学習・記憶障害の出現時期を明らかにし、NFT形成 がAD の進行のマーカーたり得るのかを明らかにすることを目的としている。 前年度までに、タウタンパク質過剰発現による学習(モリス水迷路試験および新奇物体探索試験)の障害を4、6、および10か月齢で比較したところ、学習障害は4か月齢では認められず、6か月齢以降で認められた。また、6か月齢では2か月間のドキシサイクリン(DOX)前投与により学習障害の抑制が認められたが、10か月齢では認められなかった。さらに、学習障害とNFT形成には相関が認められ、10か月齢では、2か月間DOXを前投与してもNFT量は減少しなかったことから、10か月齢で認められた強固な学習障害は、NFTのクリアランス障害に起因する可能性を示唆した。 平成30年度の実績は以下の通りである。NFTの除去にはオートファジー系の関与が報告されているため、rTg4510マウスにおいて、オートファジーのマーカーであるLC3AおよびLC3Bの発現量をウエスタンブロット法を用いて検討した。その結果、6か月齢のrTg4510マウスでは4か月齢と比較して両マーカータンパク質の発現増加が認められたが、2か月間のDOX前投与によりその発現量は減少した。一方、10か月齢のrTg4510マウスでは4か月齢と比較して両マーカータンパク質の発現増加が認められ、2か月間DOXを前投与してもその発現量は減少しなかった。このことから、10か月齢のrTg4510マウスでは、LC3を介したオートファジー系が常に飽和しており、NFTの分解・除去が障害されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、モリス水迷路試験、および、新奇物体探索試験に続いて、瞬目反射条件付け実験を実施し、学習・記憶障害を詳細に調べることを計画している。瞬目反射条件付け実験必要な数のrTg4510マウスを準備することが、同マウスの繁殖数が期待値よりもかなり少なかったためにできなかった。その結果、平成30年度の後半はrTg4510マウスの繁殖に注力せざるを得なかった。そのため、研究の進捗はやや遅れたが、以前より安定した繁殖体制を構築することができた。瞬目反射実験に使用できる月齢に達したものから順に実験を実施できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
4、6、10か月齢のrTg4510マウスについて瞬目反射条件付け実験を行う際、10か月齢のマウスの確保が律速になるため、現在飼育中のrTg4510マウスを優先して割り当てることで研究計画を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の後半はrTg4510マウスの繁殖に注力したため、瞬目反射条件付け実験を実施することができなかった。タウタンパク質の発現を抑制するためのドキシサイクリン含有飼料は使用時にオーダーメイドする必要があるため、次年度の瞬目反射条件付け実験実施時に助成金を使用する。
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