研究実績の概要 |
フッ素化両親媒性物質を肺サーファクタント薬に添加し、その薬効の増大を成就する基盤研究の一環として、親水基のない部分フッ素化アルカン(F10H16及びF10H20)、その2量体であるフッ素化アルカン(di(F10H16)及びdi(F10H20))と肺サーファクタント主成分であるジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC) との二成分相互作用及びその界面挙動をLangmuir単分子膜により精査した。298.2 K、超純水下相液の条件下で、これら4種の部分フッ素化アルカンは典型的なordered膜を形成した。F10H16 及びF10H20 の極限面積は、共に同じ数値を示し、炭化フッ素鎖の断面積を反映していた。一方、di(F10H16)及びdi(F10H20)の極限面積は単量体の約2倍の面積を示し、ダイマーにすることで膜の凝集性が向上した。二成分DPPC/部分フッ素化アルカン系の表面圧一面積曲線の測定において、全ての系においてDPPC の一次相転移圧から膜の崩壊圧の間に、組成に依存した屈曲点が現れた。この屈曲点は、部分フッ素化アルカンからなる表面ミセルの形成に起因すると考えられる。またこのミセルは、分子占有面積を考慮に入れるとDPPC 単分子膜上に形成される可能性が高い。さらにこの表面ミセル形成は、蛍光顕微鏡画像, BAM、AFM 等によっても裏付けされた。部分フッ素化アルカンは、体内での消失時間が他のアルコール型及びカルボン酸型の部分フッ素化合物よりも著しく短く、肺サーファクタントへの応用が期待できる。本研究の成果は,広範な呼吸器疾患 (喘息, SARS, COPD等) への適用拡大へと貢献できる可能性を見出している。
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