部分フッ素化アルカン(FnHm)は明確な両親媒構造を有していないが、分子内の大きな分極により両親媒性を示す。またFnHmは、水不溶性のため、通常のHmアルカンとは異なり、気/液界面においてLangmuir単分子膜を形成する。FnHmはFn部とHm部の連結部で大きな双極子モーメントを生じるため、自己集合性が強く、ゼロ付近の低表面圧から“表面ミセル”を形成する。この“表面ミセル”はFn鎖末端による長距離間の双極子-双極子相互作用により水表面に均一に分布している。そのため、この“表面ミセル”はマイクロエレクトロニクス、マイクロ流体デバイス、バイオ検出分野等における表面パターニングへの応用が期待されている。F10Hm及びdi(F10Hm)は、水面上で固体膜様の単分子膜を形成する。5 mN/mにおけるF10H16単分子膜の原子間力顕微鏡(AFM)画像において、数十nmの表面ミセルが観察された。また表面電位の測定値から、これらフルオロアルカンはFn部を空気側、Hm部を水側に配向することが分かった。DPPC単分子膜は凡そ12 mN/mで液体膨張相から液体凝縮相への相転移を示す。DPPCとフルオロアルカンの二成分単分子膜では、その表面圧-面積等温曲線上に複数の屈曲点が現れたため、DPPC単分子膜上への表面ミセルのスタッキングが示唆された。このスタッキングは各種顕微鏡法や偏光変調赤外反射吸収分光法においても確認できた。これらの結果より、F10Hm及びdi(F10Hm)はDPPC単分子膜と3次元(界面とその垂直方向)における相分離を示すことが判明した。
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