研究実績の概要 |
本年度、平成28年度の研究成果と平成29年度以降の研究計画を踏まえ、化学発がんモデル等を用いてNOドナーと高分子抗がん剤との併用抗がん作用を検討した。さらに、2種類の一酸化炭素(CO)産生薬PEG-heminとSMA/CORM2を用い、そのEPR効果の増強作用と高分子抗がん薬との併用治療作用を検討した。また、各種EPR増強剤において、腫瘍血流への影響を検討した。期間中に以下のことが明らかになった。 1、AOM/DSS誘発マウス大腸がんモデル及びDMBA誘発ラット進行性乳癌モデルにおいて、NOドナー(ニトログリセリン、アルギニン、ヒドロキシウレア)の併用により、高分子抗がん薬P-THP及びPZP(PDT治療)の抗がん効果が著しく(2-3倍)増強された。また、この治療において動物の体重減少等の副作用がほとんど見られなかった。 2、マウス皮下移植がんモデル(S180, C26)において、上記の高分子抗がん薬の腫瘍特異的な集積(EPR効果)がCO産生薬の投与により著名に増強された(1.5-2倍)。この結果は、in vivo imagingによりも確認された。 3、上記のマウス皮下移植がんモデル及びマウスメラノーマB16(EPR効果が低い、高侵襲転移性、難治性がん)において、CO産生薬と高分子抗がん薬P-THP, PZPと併用した結果、著明な治療効果の増強が得られた。また、この治療において動物の体重減少等の副作用がほとんど見られなかった。 4、マウス皮下移植がんモデル(S180, C26)を用い、上記のNOドナーとCO産生薬投与後腫瘍血流の変化を調べた結果、NOドナーによる血流の増加が認められたが、CO産生薬による腫瘍血流の著明な変化が見られなかった。この結果より、NOドナーによるEPR効果の増強は主として血流の改善と関り、COは別のメカニズムでEPR効果の増強に参与すると考えられた。
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