がん等の疾病に関与しているmicroRNA(miRNA)を標的とした核酸医薬が期待され、miRNA活性を阻害するオリゴ核酸,anti-miRNA oligonucleotide (AMO),の開発が行われている。しかしながら、その作用機序の理解は進んでいない。本研究では、電極上に固定化したオリゴ核酸のダイナミクスを指標とすることで高感度な核酸-蛋白質相互作用評価法を開発し、これを応用してmiRNA-蛋白質複合体に対するAMOの作用機序を解明することを目的とする。 本年度は、まずがん細胞の増殖抑制がAMOの構造に依存することを見出した。そこで、この詳細を明らかにするために、前記の構造が異なる2種のAMO固定化電極を作製し、これら電極上のAMOに対するAgo・miRNA複合体の結合を本研究で開発したアッセイ系にて検討したところ、電流応答の相違が確認され結合のしやすさが異なることが示唆された。より高いがん細胞の増殖抑制活性を示したAMOが、Ago・miRNA複合体に対してより強く結合することが明らかとなり、矛盾しない結果を得ることができた。このことからも、当該電気化学アッセイの有用性が示された。また、がん細胞の増殖抑制活性について、アポトーシス誘導蛋白質の発現が上昇することを明らかにし、当該AMOはアポトーシス機構にてがん細胞を死に誘導していると推察された。 一方、昨年度までに見出した電極前処理条件により検出感度が異なる事象について、電極界面の構造が電子授受活性に影響することを明らかにした。
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