研究課題
ネフロネクチン(Npnt)は、α8β1インテグリンを受容体として腎臓発生に関与する細胞外基質である。申請者は、自ら確立したNpnt ELISA定量系を用いることでNpntが種々の自己免疫疾患マウス血中で発現亢進すること、Npntに対するポリクローナル抗体は自己免疫疾患モデル増悪化を抑制することを見出した。Npnt受容体α8β1インテグリンに対する中和抗体を新たに作製して検討したが、予想外に抗α8β1インテグリン抗体は自己免疫疾患の増悪化に影響を与えないことから、Npntはα8β1インテグリンを介さない新たな機序により自己免疫疾患を増悪化させることが分かった。NpntはB細胞活性化に伴い発現し、アミノ酸配列解析からNpnt内にCa2+結合領域が推定されたことから、B細胞とCa2+に着目した機能を検討した結果、NpntはCa2+結合能を有しNpnt添加によりB細胞内へのCa2+流入を抑制できることが分かった。国内グループからのB細胞内へのCa2+流入増大がBreg分化を亢進させるという報告から、NpntとBregとの関係性を推察し、B細胞活性化の際にNpntを添加した結果、Bregの特徴であるIL-10産生B細胞の割合がNpnt濃度依存的に減少することを明らかにした。そこで、本研究では、Npnt上のCa2+結合領域に対する抗体がBreg分化抑制の阻害と自己免疫疾患増悪化への抑制効果を示すことを最終目的とし、本年度はその中でNpnt上のCa2+結合領域の同定を目的として研究を進めた。具体的には、NpntはEGFリピート、Link、MAM領域から構成されることから、それぞれの領域からなるタンパク質を精製し、放射性同位体45Caを用いてどの領域とカルシウムが結合するかの検討を進めている。
3: やや遅れている
2016年4月から福山大学薬学部に異動となり、研究室のセットアップから開始する必要があった。本研究に使用する試薬や機器の準備に時間を要したことから、進捗が遅れてしまった。現在は、セットアップが完了し、本研究を開始することができている。
NpntはEGFリピート、Link、MAM領域から構成されている。Npntのアミノ酸解析からEGFリピート内に3カ所のカルシウム結合推察領域があることが分かった。そこでNpntのカルシウム領域がどの領域内に存在するかを放射性同位体45Caを用いたカルシウム結合アッセイにて解析した結果、EGFリピート領域とは45Caは結合せず、Link内に結合領域が存在する可能性を得ることができた。現在、本結果の再現性の確認実験を行っており、今後、さらに領域を絞ったNpnt変異体を作製し45Caとの結合領域を同定することを目指す。また、Npntはカルシウム結合ではなく異なる経路で自己免疫疾患に関与する可能性もある。そのため、Npntの新たな受容体を発現クローニングで試みる予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Biochemistry and Biophysics Reports
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