研究課題/領域番号 |
16K08222
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中川 宏治 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (80360949)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | p14ARF / SIRT1 / 細胞老化 / 癌抑制遺伝子 / 脱アセチル化 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
平成28年度は以下の解析を行った。 1. 癌抑制遺伝子産物p14ARFと脱アセチル化酵素SIRT1の物理的な結合性について検討を行った。293T細胞にHA-tagを付加したp14ARFとFLAG-tagを付加したSIRT1を共発現させ、そのライゼートを用いて免疫沈降およびウェスタンブロット解析を行った結果、両者の共沈が確認された。次に、SIRT1上のp14ARF結合領域の同定を行った。SIRT1の複数の欠失変異体を作成し、同様に293T細胞を用いて免疫沈降およびウェスタンブロッティングにより解析を行った結果、p14ARFとの結合部位は、SIRT1タンパク質の中央部に位置する脱アセチル化酵素活性部位(216-500 aa)内に存在することが判明した。以上の結果から、p14ARFは SIRT1と直接的に結合することにより、その酵素活性を阻害していることが示唆された。 2. SIRT1の基質タンパク質である転写因子p53およびFOXO3aのアセチル化に対するp14ARFの効果の検討を行った。293T細胞に、p14ARFの発現ベクターを導入し、そのライゼートを用いて、部位特異的アセチル化p53抗体によるウェスタンブロット解析を行った結果、p14ARFの共発現によりp53 Lys382のアセチル化の増強が観察された。また、293細胞にHA-tagを付加したFOXO3aとFLAG-tagを付加したp14ARFを共発現させ、そのライゼートに対し免疫沈降を行い、抗アセチル化リジン抗体を用いたウェスタンブロッティングにより解析した結果、p14ARFの共発現は用量依存的にFOXO3aのアセチル化を増強させた。以上の結果から、p14ARFは、 細胞内においてSIRT1の脱アセチル化酵素活性を阻害することにより、基質となる転写因子のアセチル化状態を制御している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SIRT1とp14ARFの結合を阻害するペプチドを作成するために、SIRT1上のp14ARFとの結合に必要十分な最小領域の同定が必要であるが、その領域の絞り込みが完了しておらず、その点で若干の計画の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 引き続き、より詳細にSIRT1の欠失変異体を作成し、SIRT1上のp14ARFとの結合に必要十分な最小領域の同定を行う。 2. p14ARFが、SIRT1の基質である老化関連転写因子による遺伝子発現制御に及ぼす影響の解析を行う。 (1) SIRT1の基質転写因子(p53、FoxO3a、HIF-1)の転写活性に対するp14ARFの過剰発現の影響をルシフェラーゼアッセイにより解析する。 (2) siRNAにより14ARFをknockdownした条件下において、SIRT1の基質転写因子(p53、FoxO3a、HIF-1)の標的遺伝子(p53:p21cip1およびBax、FoxO3a:MnSODおよびp27kip1、HIF-1:GLUT1およびVEGF)の発現量に対する影響を、定量的RT-PCR法により解析する。(3) HeLa Tet-on RasV12細胞にテトラサイクリン添加し、RasV12を誘導して発がんシグナルをコンディショナルに活性化させた場合の各転写因子の標的遺伝子の発現量に対する影響を(2)と同様に解析する。
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