1. p14ARFによるSIRT1を介した細胞老化の制御機構を解析する目的で、p14ARF遺伝子を欠損する293T細胞の構築をCrispr-Cas9システムを用いて行った。p14ARF遺伝子の第1エクソン中の配列を標的とするgRNAおよびCas9ヌクレアーゼを発現する発現ベクターを構築し、この発現ベクターを293T細胞に導入して、その後、細胞のクローン化を行った。次に、増殖の見られたクローンにおけるp14ARFタンパク質の発現をウエスタンブロッティングによりを確認し、p14ARF遺伝子を欠損する細胞の選別を行った。その結果、p14ARF遺伝子を欠損する293T細胞の複数のクローンを得ることができた。 2. p14ARFがSIRT1の基質であるストレス応答性転写因子Nrf2の機能に及ぼす影響の解析を、前年度に引き続き行った。(1) Nrf2のp14ARF結合領域の同定を行った。複数のNrf2のドメイン欠失変異体の発現ベクターを構築し、それをp14ARFの発現ベクターと共に293T細胞に導入して共免疫沈降法により解析した。その結果、p14ARFは、Nrf2のN末端側領域に存在する転写活性化ドメインの周辺に結合することが分かった。(2) PIAS1によるNrf2の転写活性化の促進にPIAS1の有するSUMO化修飾のE3リガーゼ活性が関与するか否かの解析を行った。SUMOリガーゼ活性を欠損したPIAS1 W372A変異体の発現ベクターを構築し、それをU2OS細胞に導入して、Nrf2の転写活性化に対する促進効果をレポーター遺伝子アッセイにより検討した。その結果、W372A変異体では野生型PIAS1と比較して促進効果が有意に減弱していることが判明し、PIAS1によるNrf2の転写活性化の促進にはPIAS1のSUMOリガーゼ活性が関与していることが示唆された。
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