研究課題/領域番号 |
16K08223
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
多留 偉功 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (30533731)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経細胞 / シナプス / カルシウムチャネル / 電位依存性 / アダプター分子 / エンドサイトーシス |
研究実績の概要 |
シナプスは神経系の情報処理機能の中核を担う細胞間接着構造であるが、その形成・維持のメカニズムには依然として不明な点が多く残されている。シナプスの前部(プレシナプス)の中心部位であるアクティブゾーン(AZ)にはアダプター分子群が集積した固有の基盤構造が存在し、それを足場として電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)などの機能分子が局在することで、正確な神経情報伝達が遂行される。代表者らは線虫C. elegansを主な実験モデルとしてAZ形成・維持の分子機構の解析を進め、VGCCのAZへのアンカリングにおけるアダプター分子RIMB-1の重要性を示してきた。その上で本研究は、RIMB-1自身のAZ局在の制御分子機構とその意義の解明を目指している。前年度までに、RIMB-1局在制御における VGCC本体サブユニットや輸送モーター、エンドサイトーシス制御分子の関与を見出し、さらにRIMB-1局在異常を呈する変異体の順遺伝学的スクリーニングにおいて複数の変異体を単離していた。平成29年度の解析においては、それらのRIMB-1局在異常変異体の責任遺伝子変異を、一塩基置換多型を利用した遺伝的マッピングと全ゲノムシーケンス解析によって同定した。その変異の一つは、種を越えて保存されたセリン・スレオニンキナーゼ遺伝子の部分的機能欠損を生じるナンセンス変異であることを明らかにした。このキナーゼの哺乳類相同分子はクラスリン依存的エンドサイトーシスの制御に関わることが知られており、本知見によって、これまで候補分子の表現型解析から見出していたRIMB-1局在制御におけるエンドサイトーシス経路の関与について、その重要性がさらに強く示唆された。本知見はAZ基盤構造の制御機構という観点において、神経シナプスを分子レベルで理解する上で重要であり、シナプス異常が関わる精神神経疾患の解決に寄与することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アクティブゾーンアダプター分子RIMB-1の局在制御におけるエンドサイトーシス経路の関与については、これまで各種細胞内トラフィック経路分子に着目した候補分子の変異体解析によって見出されていたが、新たにアンバイアスな順遺伝学的探索によってもその関連が明らかになったことで、本研究課題が目指す分子機構解明に向けて大きな進展がなされた。それをふまえると内容面ではおおむね順調に進捗しているものと判断できるが、成果発表状況および一部探索的解析の遺伝子同定の進捗に当初計画からのずれが生じているため、「やや遅れている」という区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
29年度の解析によってRIMB-1局在制御における重要性がさらに強く示唆された細胞内トラフィック制御、特にエンドサイトーシス経路の関与について、新たに同定した部分的機能欠損変異体も活用しつつ、系統立てた関連分子変異体の表現型解析・遺伝学的相互作用解析を中心として進めることで、具体的にRIMB-1局在制御に関与する分子群とその機序を明らかにする研究推進方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)受託遺伝子配列解析の一部の時期変更、物品費について実験資材の一部購入時期変更、 研究成果発表の準備進捗の都合上、次年度使用額が生じた。 (使用計画)受託遺伝子配列解析経費、学会発表旅費および論文投稿・出版諸経費として主に使用する計画である。また物品費として実験動物飼育用培地・プラスチック資材、分子生物学実験試薬、光学機器消耗品の購入に用いる。
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