神経細胞のシナプスにおける細胞間情報伝達は、神経系の高度な情報処理機能の基礎となる。シナプスの前部(プレシナプス)に局在する電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)は伝達の引き金分子であり、アダプター分子群で構成される固有の基盤構造を足場として、機能する。しかしそれらのプレシナプス局在の機構には不明な点が多い。そこで本研究は、線虫C. elegansを実験モデルとして、VGCCとその足場タンパク質RIMB-1/RBPのプレシナプス局在における作用機序の解明を試みた。1)VGCCのプレシナプス局在について、二つのアダプター分子RIMB-1とUNC-10がその制御に関わることを見出していた。本研究はさらに順遺伝学的な修飾変異体探索によって、VGCC局在制御におけるRIMB-1とUNC-10の中心的な役割を明らかにし、構造機能相関の解析によってRIMB-1の機能ドメインを同定した。2)RIMB-1自身のプレシナプス局在の分子機序について、これまで見出していたVGCC補助サブユニットα2δの関与に加え、VGCC本体サブユニットα1の各種分子のうちUNC-2/CaV2の必要性を示した。VGCCとRIMB-1の双方向的な局在制御の関係が明らかとなった。3)さらにRIMB-1プレシナプス局在に関わる分子群について、RIMB-1局在異常変異体の順遺伝学的探索と候補分子解析をもとに検討し、エンドサイトーシス経路の重要性を明らかにした。VGCCとその制御分子は種々の精神・神経疾患に関与しており、本知見は神経科学と創薬基盤理解に寄与するものである。
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