研究課題
本年度は、エストロゲン依存性乳癌細胞株MCF7を用い、エストロゲン受容体拮抗薬のタモキシフェンを長期処理してタモキシフェン耐性株を樹立し、タモキシフェン耐性化とクロマチン制御因子Forkhead box protein A1(FOXA1)との関連について解析した。その結果、タモキシフェン耐性株ではFOXA1発現が顕著に減少していることがわかった。これまでの解析において、エストロゲン非依存性乳癌細胞では転写因子Nuclear factor-kappaB(NF-kappaB)が持続的に活性化して増殖を促進することを見出していたことから、タモキシフェン耐性株におけるNF-kappaBの活性化とその役割について検討した。その結果、タモキシフェン耐性株ではNF-kappaBが持続的に活性化して炎症性サイトカインInterleukin-6(IL6)の発現を誘導していることがわかった。さらに、タモキシフェン耐性株の増殖がNF-kappaB活性化に依存していることもわかった。FOXA1の発現減少とNF-kappaB活性化との関連を解析した結果、FOXA1はNF-kappaBシグナル自体の活性化には影響を与えないものの、NF-kappaBのIL6プロモーターへの結合を抑制してIL6発現を阻害する転写抑制因子として働くことを見出した。さらに、タモキシフェン耐性株ではFOXA1発現減少とNF-kappaB活性化によって誘導されたIL6が乳癌幹細胞様の形質を導いていることも明らかにした。以上の結果より、FOXA1の発現減少がNF-kappaBによるIL6発現誘導を促進しタモキシフェン耐性化に深く関与していることが示された。
2: おおむね順調に進展している
これまでの成果について論文発表を行うことができたから。
今後は、FOXA1の転写抑制因子としての機能について分子レベルで解析を進めるとともに、タモキシフェン耐性株においてFOXA1発現が低下する分子機構についても解析を行う。
研究が順調に進み大きな問題が生じなかったため、問題が生じた時の予備として保管していた分が未使用となった。
消耗品費に使用して今後の研究を推進させる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)
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