研究課題
FoxA1はクロマチンリモデリングの制御を介して遺伝子発現を調節するクロマチン制御因子である。FoxA1は乳癌細胞において高発現し、細胞の増殖や生存を促進する遺伝子の発現を誘導して乳癌細胞の増殖・生存に寄与することが知られている。しかし、悪性化した乳癌細胞ではFoxA1の発現が消失しており、FoxA1に依存しない分子機構により癌細胞の増殖や生存が維持されていることも明らかとなっている。そこで我々は、FoxA1の発現が消失することが乳癌細胞の悪性化に寄与するのかどうかを解析した。その結果、FoxA1は炎症性サイトカインInterleukin-6(IL-6)の発現を抑制しており、FoxA1の発現抑制によりIL-6の発現が誘導され、乳癌細胞が薬剤抵抗性や癌幹細胞様形質を獲得することが明らかとなった。このことから、FoxA1は乳癌細胞の増殖や生存を促進する一方で、IL-6の発現を抑制することによって乳癌細胞が薬剤抵抗性や癌幹細胞様形質を獲得することを阻害する機能をもつことが明らかとなった。これまでの解析から、FoxA1は乳癌細胞の増殖や生存を促進する分子として知られていたためFoxA1の機能を阻害することが乳癌の治療に役立つと考えられていたが、本研究によってFoxA1の抑制がIL-6の誘導を介して乳癌の悪性化も導く可能性があることが明らかとなった。今後は、FoxA1の分子機能について詳細な解析を行い、FoxA1による細胞増殖や生存の促進機能のみを阻害する手法について開発を行う必要がある。
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