ユビキチン・プロテアソームシステム(UPS)は多様な生命現象の進行に必須な細胞内タンパク質分解形である。神経変性疾患ではユビキチン陽性の封入体や凝集体が観察され、UPSの破綻が細胞の恒常性維持や病態発症に深く関与すると考えられている。最近、申請者らがプロテアソーム機能調節因子の探索によりショウジョウバエで同定したCG5445をHsp70と会合する新規ユビキチン結合タンパク質であることを確認した。 ショウジョウバエ複眼において易凝集性タンパク質を過剰発現させた神経変性病態モデルにおいてCG5445過剰発現により病態の軽減、CG5445ノックダウンによる病態の増悪化を見出したことから、本研究ではCG5445の生理的役割と易凝集タンパク質分解調節機構を明らかにすることによる病態発症機構の理解を目的とした。哺乳類培養細胞においてcg5445ヒトオルソログ(c6orf106)を発現させることで、ハエ同様に易凝集性タンパク質(変異SOD1やTDP43)の可溶性が増加することを確認し、UPSへの分解促進効果があることを明らかにした。内在性c6orf106認識抗体の作成およびcrispr/cas9システムによるKO細胞、KOマウスの作成も進み、表現型観察により生理的重要性について検証中である。ハエでの結果に比べ哺乳類での検証では表現型がマイルドになるため、哺乳類ではハエに比べユビキチン結合タンパク質をコードする遺伝子が増えており、バリアントも多いことから、代替性のある因子が存在するのではないかと考えている。そこで、ショウジョウバエにおける検証についてすでに論文を報告し、現在は哺乳類での解析を主に推進している。
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