研究課題/領域番号 |
16K08229
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
浴 俊彦 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40192512)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダイサー関連ヘリカーゼ / 線虫 / 抗線虫薬 / 核酸依存性ATPase |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が独自に発見した線虫の染色体動態制御に必須なダイサー関連ヘリカーゼDRH-3とその結合タンパク質E1、およびDRH-3パラログであるDRH-1の生化学的性状解析、さらにDRH-3を標的とした創薬展開を目指している。本年度実施した主な研究内容と結果を以下に示す。
(1)His-SUMOタグ融合DRHの調製: タグ切断によるnative DRHタンパク質の調製が可能で、発現量の向上も期待できるHis-SUMOタグ融合DRHの発現系の構築と発現・精製について検討した。DRH-3については、従来のHisタグ融合DRH-3より数倍高い収率が得られ、SUMOプロテアーゼ処理によるHis-SUMOタグ除去も確認できたため、今後は本発現系をnative DRH-3の調製に用いることとした。一方、His-SUMOタグ融合DRH-1については、発現量自体が低く、ウエスタンブロットでタグ切断は確認できたものの、十分なタンパク質量を回収するには至らなかった。 (2)DRH精製標品のATPase活性測定: DRH-3の二本鎖RNA依存性ATPase活性の検出に用いた蛍光アッセイ系によって、タグ融合DRH-1標品の活性測定を試みたが、十分量のタンパク質標品が得られず、まだ再現性ある結果を得るには至っていない。今後、DRH-3については、native DRH-3の活性測定や阻害剤スクリーニングを実施する予定である。 (3)DRH結合タンパク質の調製と相互作用解析:昨年度に判明したeri-5とrde-4の点変異を校正し、12種の欠失変異型E1と4種のDRH結合候補のGST融合タンパク質発現プラスミドを整備した。これらの大腸菌での発現・抽出条件(超音波、化学処理)を検討し、6種類を可溶性タンパク質として回収できることを明らかにした。現在、プルダウン実験用のGST融合タンパク質の調製を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の主な目標として、(1)His-SUMOタグ導入等によりDRHタンパク質の調製法を改良すること、(2)精製したDRHタンパク質の核酸依存性ATPase活性を評価すること、(3)変異型E1等の発現・調製条件を検討し、DRH-3とのプルダウン実験を実施すること、以上3項目を掲げた。
項目1については、DRH-1とDRH3のHis-SUMOタグ融合発現プラスミドを作製し、発現・精製実験を実施した。DRH-1については、期待したようなSUMOタグ導入による発現量の有意な増加は認められなかったが、His-SUMOタグ融合DRH-3については、従来のHisタグ融合DRH-3よりも高い収量が得られた。計画以上に研究が進展した点として、SUMOプロテアーゼ処理によるHis-SUMOタグの切断が確認され、生化学的解析に適したnativeなDRH-3タンパク質調製が可能となったことが挙げられる。 項目2については、DRH-3標品の二本鎖RNA依存的ATPase活性を検出するなどの成果が得られているが、DRH-1タンパク質については、可溶化Hisタグ融合DRH-1発現系を確立したものの、DRH-3と比べて大腸菌における発現量が非常に低いため、アッセイに必要な量を確保するのが困難な状況である。そのため、発現量を向上させる処理(アルコール添加など)を試し、かつ培養スケールを上げて、タンパク質精製を試みている。 項目3については、作製した12種類の変異型E1タンパク質と4種のDRH結合候補タンパク質の発現・抽出条件・可溶性を詳細に検討した。その結果、少なくとも4種類のE1変異体と2種の候補タンパク質がプルダウン実験に使用できることが判明し、その準備を進めているところである。これらの研究成果は2つの国内学会で発表した。 以上の結果から、研究は概ね計画通りに進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果と課題を踏まえて、最終年度の研究は以下の項目を実施する。
1.タンパク質発現量の増加対策(アルコール添加など)と大量培養を併用して、His-SUMOタグ融合DRH-1の調製を試みる。また、His-SUMOタグ融合DRH-3については、核酸依存性ATPaseアッセイによる阻害剤スクリーニングと詳細な生化学的解析のために、精製とタグ除去を行い、native DRH-3を調製する。 2.項目1で精製したDRH-1の核酸依存性ATPase活性の測定を行う。DRH-1の酵素学的解析は世界初の成果になると期待されるので、今年度、集中的に研究を推進する。 3.可溶化できた変異型E1やDRH結合候補のGST融合タンパク質と、Hisタグ融合DRH-1やDRH-3との結合性をプルダウン法で評価する。DRH-3との結合に関与するE1領域を限定することを目指す。 4.DRH-3標品を用いたATPaseアッセイ系を用いた標準阻害剤によるスクリーニングを試みる(現在、本実験に必要な標準阻害剤キットの提供を分子プロファイリング支援活動に申請中)。研究成果はまとまり次第、査読付き国際学術論文や学会等で発表してゆく。
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