本研究では、申請者が発見した線虫の染色体分離に必須なダイサー関連ヘリカーゼDRH-3とその結合タンパク質E1、およびDRH-3パラログのDRH-1の生化学的解析、さらにDRH-3を標的とした創薬展開を目指している。本年度実施した主な研究内容と結果を以下に示す。
(1)今年度は、DRH-1タンパク質の発現量・回収量を増加させるため、GSTタグ、FLAGタグ、Strepタグの各融合DRH-1の発現・精製を検討した。その結果、GSTタグ融合DRH-1では多くが不溶化し、FLAGタグとStrepタグでも各アフィニティカラム溶出画分に明確なタンパク質バンドは確認できなかったことから、DRH-1調製には、培養スケールを上げたHis-SUMOタグ発現系を用いることとした。 (2)DRH-3阻害剤候補の化合物スクリーニングを目的に、His-SUMOタグ融合DRH-3を発現・精製し、蛍光法を利用したATPase活性測定を行った。弱い二本鎖RNA依存性ATPase活性が見られたが、同時に酵素非添加群に高いバックグラウンド活性が検出されたため、現在、ATPase反応停止条件の確認を行っている。並行して、検出原理の異なるATPaseアッセイ法による活性測定を進めている。 (3)昨年度からのタンパク質発現・精製を継続し、最終的に11種の欠失変異型E1と4種のDRH結合候補のGST融合タンパク質標品の調製を完了した。His-SUMOタグ融合DRH-3とこれらのGSTタグ融合タンパク質でプルダウン実験を行ったが、Hisタグ融合DRH-3では観察できた野生型E1との結合が見られなかった。この原因として、N末端のSUMOタグによる立体障害が考えられた。さらにE1との結合領域がDRH-3のN末に存在する可能性が示唆されたことから、現在、この可能性を検証するための実験を進めている。
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