研究実績の概要 |
本研究の目的は、種々の生理活性物質、あるいは低分子化合物によるIgE非依存的なマスト細胞活性化のメカニズムを解明し、マスト細胞を標的とした新たな慢性炎症性疾患の治療薬開発のための基礎的知見を得ることである。平成29年度は以下の成果を得た。 1.マウス骨髄由来培養マスト細胞を幹細胞因子存在下、線維芽細胞と共培養して得られる成熟マスト細胞では、IgE非依存的な脱顆粒応答に関わることが示唆されているGタンパク質共役型受容体(GPCR)ファミリーMrgpr遺伝子群のうち、MrgprB1, B2, B10, C11各遺伝子が発現誘導されることを見出した。この他、MrgprA4, Eがマスト細胞に発現することを明らかにし、これらMrgpr遺伝子群はいずれもdexamethasone処理により発現抑制されることを見出した。 2.黄色ブドウ球菌δ毒素によるマスト細胞の脱顆粒応答は、細胞外Ca2+を除いた培養系でも起こる反応であり、Ca2+依存性の低い第一相と、Ca2+流入により増幅される第二相に分離できることが明らかとなった。 3.成熟マスト細胞の脱顆粒応答を抑制するGPCRとして同定したGPR35にはそのリガンド応答性に大きな種差があることを明らかにした。ラットGPR35遺伝子を導入したラットマスト細胞株を樹立し、GPR35を介する抑制作用を確認した。さらにGPCR評価系を用いて親和性の高い新規アゴニストを見出した。
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