研究課題
高密度リポタンパク質(HDL)は血中濃度が高いほど動脈硬化性疾患のリスクが減少するとされ、その本態は、HDLが末梢組織(動脈硬化巣)に蓄積した余剰脂質(コレステロール、リン脂質)を膜トランスポーターABCA1またはABCG1を介して引き抜き(脂質搬出反応)、最後は肝臓へと運ばれ異化されるという、いわゆる「コレステロール逆転送」活性にある。人工的に作製したHDL様粒子を投与して一時的にHDL濃度上昇を促すことにより、動脈硬化病変が縮小したという臨床知見が報告されており、HDLには積極的な病態治癒効果があることが証明されている。本研究では、HDL上のアポリポタンパク質A-I (apoA-I)に結合するapoA-I binding protein (AIBP)の生理的意義の解明を目的とした。平成29年度は、リコンビナントAIBPの作製において、大腸菌由来LPSの糖鎖を欠損させたClearColi BL21を使用し、AIBPタンパク質精製法について改良を行った。IPTGによるタンパク質発現の時間と温度の最適化、界面活性剤の種類と含量の検討、さらに、Ni カラム精製の後に行っていたLPS除去カラムの代わりに陰イオン交換カラムによる精製を追加することにより、これまで得られていたAIBPタンパク質の約5倍程度の収量を得ることができた。また、ヒトマクロファージ細胞に対して、AIBPがLPSによって誘導される炎症性サイトカインの発現を減少させる効果を示すことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
マウスを使用した実験に向けて、リコンビナントタンパク質作製手法を改良することで、LPSフリーでかつ収量を増やすことに成功し、さらに、AIBPの抗炎症効果などが明らかになっており、概ね当初の予定通りに進んでいると考えている。
AIBPの抗動脈硬化について細胞及びマウスを使った実験により検証する。具体的には、抗炎症効果のメカニズムと、マウスを使ったAIBPの生理的な機能について評価する予定である。
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