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2018 年度 実施状況報告書

MDGAファミリー分子群による興奮性/抑制性シナプス形成と社会性行動の制御

研究課題

研究課題/領域番号 16K08237
研究機関香川大学

研究代表者

山本 融  香川大学, 医学部, 教授 (10251480)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードMDGA1 / MDGA2 / ニューロリギン / ニューレキシン / 自閉スペクトラム症 / 統合失調症 / 記憶 / E/Iバランス
研究実績の概要

興奮性・抑制性シナプス形成のバランス(E/Iバランス)を適切に維持することは神経回路網を正常に機能させていくために必須であり、その異常は自閉スペクトラム症(ASD)や統合失調症などの原因ともなる。シナプス形成を正に制御する機構については多くの解析がなされ、その実態がかなりの程度明らかにされているが、E/Iバランスを適切に制御するのに必要な、シナプス形成を負に制御する機構については不明な点が多い。我々は、IgSFに属するGPIアンカー型の細胞外タンパク質であるMDGAファミリー分子群がニューロリギンファミリー分子群と相互作用してその機能を抑制することによりシナプス形成を負に制御していること、また、その欠失によりE/Iバランスが崩れ、種々の行動異常が引き起こされることを明らかにし、解析を進めている。これまでに、MDGA2欠失マウスにおいてはE/Iバランスの興奮側へのシフトと、これに伴うASD様の社会性行動異常が認められること、また、MDGAファミリーのもう一つのメンバーであるMDGA1欠失マウスにおいては、MDGA2欠失マウスとは逆に、E/Iバランスの抑制側へのシフトと、これによる学習・記憶障害がもたらされること、さらに、社会性行動の一部にMDGA1欠失マウスとMDGA2欠失マウスとの間に正反対な形質が認められることを明らかにしている。今年度は、こうした解析結果の精緻化を進めるとともに、MDGA1のヘミ欠失体の解析をおこなった。その結果、上記傾向が確認されるとともに、MDGA1のヘミ欠失体にも学習記憶障害が認められること、さらに、この障害は、ドラッグリポジショニングの観点から新たに探索した既存薬により改善できることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題とこれに先立つ研究課題により得られたMDGA2についての解析結果をまとめて公表するとともに(Neuron, 91, 1052-1068, 2016)、MDGA2欠失マウスのASDモデルマウスとしての有用性を確認し、これを利用することにより、少なくとも一部のASDに奏功しうる薬剤の探索に成功した。また、MDGA1欠失マウスの解剖学的・電気生理学的・行動生物学的な解析を進め、その基礎的な表現形を明らかにするとともに(Cell Rep. 21, 3637-3645, 2017)、その形質を改善する薬剤の探索に成功した。これらの解析によりMDGA1が抑制性シナプスの、MDGA2が興奮性シナプスの形成制御においてそれぞれ重要な役割を果たしていることを示し、MDGAファミリー分子群のE/Iバランス統御における基本的な機能を明らかにするとともに、E/Iバランス偏移に伴う認知・行動異常を改善しうる薬剤を同定し、こうした発達障害に分類される異常の少なくとも一部は成人後の投薬により改善されうることを示すことができたため。

今後の研究の推進方策

種々の精神神経疾患における分子病態の背景としてE/Iバランス偏移が注目されているが、本研究における解析により、MDGAファミリー欠失マウスがそれぞれ興奮側・抑制側にそれぞれ偏移したモデルとして有用であることが示された。解析を進めていくことにより、高次脳機能統御におけるE/Iバランス制御の意義を明らかにするとともに、こうした異常を改善する薬剤を探索することにより、新たな精神神経疾患創薬シーズの獲得を目指していく。

次年度使用額が生じた理由

MDGA欠失マウスの表現型解析の精緻化を進めるため補助事業期間の延長が必要となり、そのための費用を次年度に措置したため。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] The University of British Columbia(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      The University of British Columbia
  • [国際共同研究] Cincinnati Children's Hospital(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Cincinnati Children's Hospital
  • [学会発表] MDGAファミリー分子群の欠失が引き起こすE/I バランス偏移に伴う認知・行動異常の解析2019

    • 著者名/発表者名
      Razib Hossain, 多田 篤史, 黒川 直弘, 長澤 研, 琢磨 和晃, 尾嶋 大喜, 高橋 弘雄, 岸本泰司, 山本 融
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] マウスモデルを用いたプラセボおよびノセボ反応条件づけの開発と評価2019

    • 著者名/発表者名
      青野 仁美, 藤原 友佳, 尾嶋 大喜, 山本 融, 岸本泰司
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] Alcadein αノックアウトマウスは加齢で網膜神経節細胞が脱落する2018

    • 著者名/発表者名
      中野裕貴 小野葵 小林守 高砂縁 村山千明 尾嶋大喜 山本融 廣岡一行
    • 学会等名
      第122回 日本眼科学会総会
  • [学会発表] Retinal Ganglion Cell Loss in Alcadeinα Knockout Mice.2018

    • 著者名/発表者名
      Yuki Nakano, Aoi Ono, Mamoru Kobayashi, Yukari Takasago, Chiaki Murakami, Daiki Ozima, Tohru Yamamoto, Kazuyuki Hirooka
    • 学会等名
      ARVO 2018: The Association for Research in Vision and Ophthalmology Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] シナプス形成抑制因子MDGA1の欠損は興奮/抑制バランスの抑制側へのシフトによる学習・記憶障害をもたらす2018

    • 著者名/発表者名
      山本 融 Steven A. Connor  Ina Ammendrup-Johnsen 岸本 泰司 原田 岳 尾嶋 大喜 Razib Hossain Ann Marie Craig
    • 学会等名
      第41回日本神経科学大会
  • [学会発表] Synaptopathies associated with loss of MDGAs.2018

    • 著者名/発表者名
      Steven Connor, Ina Ammendrup-Johnsen, Yasushi Kishimoto, Parisa Karimi Tari, Vedrana Cvetkovska, Takashi Harada, Daiki Ojima, Tohru Yamamoto, Yu Tian Wang, Ann Marie Craig
    • 学会等名
      17th Annual Molecular and Cellular Cognition Society Meeting.
    • 国際学会
  • [産業財産権] パーキンソン病の診断指標2019

    • 発明者名
      山本 融 他
    • 権利者名
      香川大学 他
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2019-033661

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公開日: 2019-12-27  

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