研究課題/領域番号 |
16K08242
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
今川 正良 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (20136823)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂肪細胞分化 / 上皮間葉転換 / EMT / Smad / プロモーター / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
脂肪細胞分化初期の制御に重要な機能を有するfad24 (factor for adipocyte differentiation) およびfad104の2つの新規遺伝子の有する新たな機能解明を目的として本年度は以下の研究を行った。 fad104については、まず初めに、TGF-β1誘導性の上皮間葉転換 (epithelial to mesenchymal transition, EMT) によるfad104の発現変化を検討した結果、EMT誘導細胞においてfad104の発現量が高いことがわかった。そこで次にヒト子宮頸がん由来HeLa細胞のTGF-β1誘導性EMTに対する影響を検討した。その結果、fad104発現抑制下ではEMT誘導を促進し、強制発現下では抑制した。これらの結果より、fad104遺伝子は、HeLa細胞のEMTを負に制御することが明らかになった。さらに、EMTの誘導過程のどのシグナル伝達に関わっているか検討したところ、fad104は、Smadシグナルに深く関与することを明らかとした。 fad24については、NF-κBのサブユニットであるp65と相互作用し、NF-κBを介するプロモーター活性を負に制御することをすでに明らかにしているため、FAD24によるNF-κBを介したプロモーター活性制御のメカニズム解明を目的とし、活性制御に関わるFAD24の領域を概ね特定した。しかし、その過程で、レポーターアッセイの内部標準自体の活性にFAD24が影響を与えていることが推定される結果が得られたため、内部標準として知られるCMVプロモーターをルシフェラーゼレポータープラスミドに挿入し、その活性にFAD24が与える影響について検討した。その結果、FAD24はCMVプロモーターを正に制御する、すなわち転写を正に制御する新たな機能を有することが強く示唆される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fad104については、HeLa細胞を用いた検討により、TGF-β1誘導性EMTを負に制御することを明らかにできた。またその機構として、TGF-β1-Smadシグナルを制御していることが強く示唆された。以上の知見をまとめ、現在投稿準備中である。 fad24については、使用する内部標準の値が変動することに着目し、その原因追究のため、fad24自身が転写制御調節に直接関わっていることを想定し検討したところ、CMVプロモーターの活性を正に制御するという新たな知見を得ることができた。これは想定外の展開であったが、fad24の新たな生理機能の一端を明らかにしつつあるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
fad104については、EMT過程において、TGF-β1-Smadシグナルにどのように関わっているか、その詳細を明らかにする。また、がん細胞の浸潤・転移に及ぼす影響についてもシグナル伝達経路を中心に検討を進める。 fad24については、転写制御能を有することはほぼ確実であるので、その詳細を明らかにする。さらに、fad24自身のプロモーター解析も進めるとともに、細胞がん化に及ぼす影響についても併せて検討を進める。
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