研究課題/領域番号 |
16K08249
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
宮川 世志幸 日本医科大学, 医学部, 講師 (90415604)
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研究分担者 |
内田 宏昭 東京大学, 医科学研究所, 講師 (20401250)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヘルペスウイルス / 神経細胞特異的遺伝子発現 / UL41 / インシュレーター |
研究実績の概要 |
本研究では新規無毒化ヘルペスウイルス(HSV)ベクターを用いた神経細胞選択的治療遺伝子導入システムの開発を目指している。今年度はHSVベクターにおける神経特異的な治療遺伝子発現に有用なHSVゲノム領域であるTerminal repeat (TR) 近傍領域に注目し、本領域の遺伝子発現調節機構を明らかとするため、以下の解析を実施した:①TR領域に含まれるHSV特異的インシュレーターの欠損変異体の作製及び機能解析、②HSV遺伝子UL41欠損変異HSVベクターを用いた遺伝子発現解析。①について、TR領域に含まれるHSV特異的インシュレーターCTRS/CTUS/CTaによる遺伝子発現調節機構を調査することを目的として、同TR領域をプラスミドベクターにクローニングを行い、同領域に含まれるHSV特異的インシュレーターCTRS3とCTRS1/2の間にレポーター遺伝子発現カセットを挿入した。本プラスミドを元にHSV特異的インシュレーターの欠損変異プラスミドを複数構築した。現在これらのプラスミドをラット神経細胞初代培養系に導入し、発現解析を進めている。また同様に同プラスミドを用いてHSV特異的インシュレーター欠損変異HSVベクターの構築も行っている。②についてはUL41欠損変異がTR領域からの神経特異的遺伝子発現に影響を与えるか解明するため、UL41欠損HSVベクターを作製した。同ベクターを用いてin vitroラット神経細胞初代培養系に対する遺伝子導入実験、ラット海馬内投与実験を実施した。その結果、UL41欠損は著しくTR領域からの神経特異的遺伝子発現を増強すること、同変異はベクターの細胞毒性には全く影響を与えないことを明らかとした。以上より、UL41欠損変異は神経特異的に治療遺伝子を送達するためには極めて有用な遺伝子変異であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はHSVゲノムTR領域の遺伝子発現調節機構を明らかとするため、同領域に含まれるHSV特異的インシュレーターの単離、それを組み込んだレポータープラスミドの作製及び機能解析を計画していた。同解析に必要なHSV特異的インシュレーターの単離、欠損変異プラスミドの作製は既に完了している。一方、概要に示したようにUL41変異HSVベクターの作製及び機能解析も実施した。同変異解析は本プロジェクトの目的である神経細胞選択的治療遺伝子デリバリーシステム構築を達成するに辺り非常に有用であると判断し、計画に加えた。しかし計画にやや変更があったため、HSV特異的インシュレーター欠損変異プラスミドの機能解析はまだ実施中となっている。以上のことから今年度の当初の研究計画はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている発現解析を完了し、いずれのゲノム部位が神経特異的遺伝子発現に重要であるか同定する。同定されたTR転写制御配列を連結したレポーター遺伝子発現カセットを無毒化HSVベクターに挿入する。同ベクターを用いて中枢・末梢神経系における遺伝子発現量及び発現特異性について解析する。また今回の報告で同定したUL41変異と組み合わせることで遺伝子発現量及び発現特異性がどのように変化するか解析する。また最終年度では実施計画にあるように申請者らが以前開発したHSV糖タンパク質改変による神経細胞選択的感染技術とmiRNAを利用した非特異的遺伝子発現抑制をTR転写制御配列による神経特異的遺伝子発現と組み合わせる予定である。このことも考慮し、細胞選択的HSV感染技術構築に必要なHSV糖タンパク質gD改変、miRNAを利用した非特異的遺伝子発現抑制に必要な神経細胞に発現のないmiRNA認識配列を組み込んだ発現カセットも合わせて準備に入る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画していたHSVインシュレーター搭載プラスミドを用いた発現解析がやや遅れているため、qPCRやフローサイトメトリーを用いた発現解析に使用する予定の消耗品費に余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
HSVインシュレーター搭載プラスミドあるいは変異を導入したHSVインシュレーター搭載プラスミドを培養細胞、神経細胞初代培養系に遺伝子導入し、そのレポーター遺伝子発現量をqPCRやフローサイトメトリーを用いて解析する。またレポーターアッセイなどを有効に活用し、発現量の経時的変化を定量する。
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