研究課題
本研究では、申請者らが開発した無毒化HSVベクターを応用して、神経特異的治療遺伝子を送達できる新規遺伝子治療用担体の創出を目指している。最終年度の計画は、神経特異的に転写活性が高いゲノム領域Terminal repeat (TR) 領域に含まれるHSV特異的インシュレーターを欠損させたHSV変異体を用いた発現・機能解析を進めることであった。インシュレーターによる遺伝子発現制御にImmediate-early遺伝子ICP0がどのように影響するか解析するために、HSV特異的インシュレーターCTRS1/2/3、ICP0を欠損した組換えHSVを用いた発現解析を実施した。具体的には、ラット後根神経節(DRG)、海馬由来神経細胞初代培養系に対して、HSV変異体を感染させ遺伝子発現効率を検討した。その結果、前年度同様にCTRS3欠損により遺伝子発現が有意に上昇すること、またCTRS1/2欠損すると逆に遺伝子発現が著しく減少することを明らかとした。次に、同制御配列がin vivoにおいても同様にTR領域の転写活性に影響を与えるか解析を進めた。マウス座骨神経に対して、上記で使用したHSV変異体を投与し、1週間後、投与部位組織及びDRGを単離した。現在その発現解析・病理解析を進めている。以上、本研究期間を通じて、神経特異的に転写活性化するTR領域の遺伝子発現制御機構を解析し、HSV特異的インシュレーターCTRS1/2が同領域からの遺伝子発現に極めて重要な役割を果たしていること、またCTRS3欠損は同領域からの遺伝子発現向上に有用な変異である可能性を見出した。今後は本研究で得られた成果を元により洗練された神経特異的治療遺伝子送達システムの創出に力を注ぎたい。
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Journal of Virology
巻: 92 ページ: 00536-18
10.1128/JVI.00536-18