多機能性レギュカルチン(RGN)の病態生理的役割に関する研究を実施し、以下に示す研究実績を得た。 1 肥満症の病態機序におけるRGNの関与の解明:肥満モデルラットにおいてRGNが脂肪組織の肥大化を抑制することを見出した。この発見をもとに、RGNを標的とした肥満を伴うメタボリックシンドロームの治療方法を確立したいと考えている。 2 RGNの細胞周期停止機能を利用した癌の治療法の開発:ヒト由来の膵臓癌細胞、肺癌細胞、肝臓癌細胞では、ストレス応答シグナル経路の活性化によってRGNの遺伝子発現が低下していることを見出した。この発見をもとに、癌細胞内でRGNを発現させることのできるRGN発現ウイルスやRGN発現誘導化合物を用いて、RGNを標的とした新たな癌治療方法を確立したいと考えている。 3 骨粗鬆症の病態機序におけるRGNの関与の解明:リウマチにおける骨粗鬆症の発症には、炎症性サイトカインが関与していることが知られており、RGNが炎症性サイトカインによる破骨細胞の活性化を制御することを見出した。リウマチの発症初期に骨粗鬆症を予防することが重要視されていることから、この発見により、RGNを標的とした関節リウマチにおける骨粗鬆症の予防法を確立したいと考えている。 4 RGNによる細胞内ストレス関連疾患の発症抑制の解明:マウス脳において虚血再灌流障害を与えると、損傷部位の神経細胞においてストレス顆粒が形成されることを見出し、RGNが細胞内のカルシウムシグナル伝達経路を介してストレス顆粒の形成を制御することを見出した。この発見により、神経細胞においてRGNを介した新しいストレス応答反応が存在することを明らかにした。
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