Eg5阻害剤S-trityl-L-cysteine (STLC)及びCdk1阻害剤RO-3306により擬似的な細胞質分裂を誘導し、プロテオミクス解析により、中間径フィラメントタンパク質のチロシンリン酸化の可能性を見出した。遺伝子導入による発現系を構築し、リン酸化部位と推定されるチロシン残基をフェニルアラニンに置換した変異体遺伝子を構築した。チロシンリン酸化と細胞内局在を検討したが、どちらも野生型と比較して変化は観察されず、このチロシン残基リン酸化の生理的意義は低いと推定した。 阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニングにおいて、3種の受容体型チロシンキナーゼが細胞分裂制御に関与する可能性を見出した。このうち2種をsiRNAによりノックダウンすると、阻害剤と同様な細胞分裂への影響が観察された。残りの1種については、3種の阻害剤が染色体整列に影響し、紡錘体チェックポイントを活性化することで細胞分裂進行を遅延させることを見出し、論文として報告した。 また、v-Src発現がSTLCによる細胞分裂前中期の停止を解除し、早期に細胞分裂を終了させることを見出した。v-Srcによるこの効果はキナーゼ活性に依存し、Src抑制性のCskキナーゼのノックダウンによりc-Srcを活性化させると、同様な効果が観察された。in vitroキナーゼアッセイにより、v-Srcが直接Cdk1をリン酸化すること、さらに、Cdk1の基質リン酸化の低下から、v-Srcによるリン酸化がCdk1のキナーゼ活性を低下させることを明らかにした。さらに、v-SrcによるCdk1のリン酸化を介した早期の細胞分裂終了は、抗がん剤パクリタキセル感受性を低下させることを見出した。これらの結果は、v-Srcが細胞分裂異常を介して染色体不安定性を誘導する機構の一つであると考えられ、論文として報告した。
|