研究課題/領域番号 |
16K08256
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
藤森 功 大阪薬科大学, 薬学部, 教授(移行) (70425453)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肥満 / エイコサノイド |
研究実績の概要 |
肥満は多くの生活習慣病の発症原因とされ、肥満の解消や防止は重要である。現在、画期的な抗肥満薬が開発されていない理由の一つとして、肥満の制御機構が明確でないことが挙げられる。これまでに、プロスタグランジン(PG)やロイコトリエン(LT)などのエイコサノイドが脂肪細胞の分化制御に関わることが明らかとなってきた。本研究では、細胞および遺伝子改変動物を用いて、肥満制御におけるエイコサノイドの生理的意義とその制御機構を解明する。さらに、エイコサノイドの機能調節を目的とした抗肥満薬の開発を目指している。 PGD2による肥満促進機構について解析したところ、PGD2はPGD2受容体の一つであるDP2受容体に結合し、protein kinase Aの活性化の抑制を介して脂肪分解系の律速酵素であるhormone-sensitive lipaseの活性化を抑制し、脂肪蓄積を促進するメカニズムを明らかにした。さらに脂肪細胞の分化制御におけるLT類の影響を調べるために、脂肪細胞の分化過程におけるLT生合成酵素遺伝子の発現について調べた。その結果、LT生合成酵素の一つであるLTC4合成酵素(LTC4S)の遺伝子発現が、脂肪細胞の分化の進展とともに上昇し、また、肥満マウスの内臓脂肪組織においてもLTC4S遺伝子の発現が上昇することが分かった。また、LTC4Sの遺伝子発現が脂肪細胞分化制御のマスター因子であるPPARγに依存することが分かった。LTC4S遺伝子プロモーターを検索し、PPAR結合配列を見出し、PPAR結合配列にPPARγが結合することをクロマチン免疫沈降法により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PGD2により脂肪蓄積機構の分子メカニズムを解明した。また、ロイコトリエン生合成酵素の一つであるLTC4Sの遺伝子の脂肪細胞における遺伝子発現活性化機構の一部を明らかにした。肥満マウスの内臓脂肪組織において、LTC4S遺伝子の発現が亢進していることが分かった。一方で、LTC4の受容体であるCysLT1,2の発現は脂肪細胞では極めて低いものの、マクロファージではいずれも発現していることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
DP2遺伝子欠損マウスおよび脂肪細胞特異的PGD合成酵素遺伝子欠損マウスを用いて、脂肪組織におけるPGD2の機能について解析する。脂肪細胞におけるLTC4S遺伝子の発現調節機構を解明する。また、肥満の脂肪組織に浸潤したマクロファージにおけるLTC4の機能を解明する。創成したPGD2合成酵素の一つであるリポカリン型PGD合成酵素の阻害剤を用いて肥満抑制効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
肥満マウスを用いた実験の実施が平成30年度に延びたため。 平成30年度に入り、既に上記実験を開始している。
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