研究課題
肥満は多くの生活習慣病の発症原因とされ、肥満の解消や防止は重要な課題とされる。これまでに画期的な抗肥満薬が開発されていないことから、我々は肥満の制御機構の解明を目的として本研究を行った。これまでにプロスタグランジン(PG)やロイコトリエン(LT)などのエイコサノイドが脂肪細胞の分化制御に関わることが明らかとなってきた。本研究では、細胞および遺伝子改変動物を用いて、肥満制御におけるエイコサノイドの生理的意義とその制御機構の解明を行った。我々は、Cre/loxシステムを用いて、脂肪細胞特異的PGD2合成酵素遺伝子欠損マウスを作製し、高脂肪食摂餌における肥満への影響を解析した。その結果、脂肪細胞でPGD合成酵素を特異的に欠損させると、食事性肥満が約20%抑制され、インスリン抵抗性も改善された。また、脂肪組織における炎症関連遺伝子の発現も抑制されており、脂肪細胞におけるPGD合成酵素の抑制は、抗肥満およびインスリン感受性の改善に寄与するものと考えられた。一方、PGD2による肥満促進機構の解析では、脂肪細胞においてPGD2はDP2受容体に結合し、protein kinase Aの活性化を抑制することが分かった。さらに、脂肪分解系の律速酵素であるホルモン感受性リパーゼの活性化が抑制され、結果として脂肪蓄積が促進されることが分かった。脂肪細胞におけるLT類の機能を解析したところ、LTC4合成酵素は脂肪細胞の分化の進展とともに発現レベルが上昇することが分かった。しかし、脂肪細胞ではLTC4の受容体の発現レベルは低いことから、脂肪細胞で産生されたLTC4は、パラクライン的に機能すると考えられた。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 1931
10.1038/s41598-018-38453-y
http://pathobiochem.pharm.oups.jp/