研究課題/領域番号 |
16K08260
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
深澤 征義 国立感染症研究所, 細胞化学部, 室長 (20291130)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HCV / ウイルス / 宿主細胞 / ノックアウト細胞 |
研究実績の概要 |
本研究はウイルスの宿主細胞への侵入過程に特に着目し、C型肝炎ウイルス(HCV)感染系をモデルとして、ウイルス-宿主間、特に侵入過程における両者の攻防の一端を考察することを目標としている。HCVには、CD81、Claudin-1、Occludin、SRBI、EGFR等、複数の侵入に関わる宿主因子(受容体)が知られている。これまでに、ヒト肝由来Huh7.5.1細胞よりCD81欠損株、Claudin-1欠損株を樹立し、Huh7.5.1-8細胞およびHepG2/CD81細胞よりOccludinノックアウト細胞をゲノム編集技術を用いて樹立することで、肝細胞へのHCV感染にこれら受容体が必須であることを示している。これらHCV受容体欠損細胞に対して、HCV-JFH1株を繰り返し感染させることで、感染性ウイルス株が得られるかを前年度より継続して検討している。依然として、CD81欠損株、Occludin欠損株では、全く感染性ウイルス株が得られておらず、genetic barrierが非常に高いことがあらためて示唆された。一方で、EGFR部分欠損株を共同研究者から導入し検討した結果、野生型HCV-JFH1株では感染が見られないが、感染が成立する亜株が存在することが示唆された。昨年度の検討から、Claudin-1欠損株に感染するHCV-JFH1由来亜株、SRBI依存性が欠損(大きく低下)したウイルス株も得られている。以上の結果から、HCV感染において、少なくとも実験室レベルでは、Claudin-1、SRBI、EGFRに対しては、genetic barrierがCD81やOccludinに比べ高くないことが考えられた。 Claudin-1欠損株に感染するHCV-JFH1由来亜株の性状解析も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、受容体選択性の異なるウイルス株の分離が進んでいる。 新たにEGFR選択性の異なる亜株の存在も明らかとなってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して、受容体選択性の異なるウイルス株の分離を試みる。分離された受容体選択性の異なるウイルス株について、ゲノム配列の決定、性状解析を進め、当該表現型を示す分子背景について議論する。将来的には、生物学的、医学的意味についても考察できるようにしたい。HCVはヒト指向性が高いウイルスである。受容体の種特異性が変化したウイルス株が分離されているかについても検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の希望額より26%減の額が交付されている。次年度以降のウイルス株の性状解析には分子生物学的実験が多く多額の費用が見込まれる。そのために本年度は、極力節約に努め、当初予定していた、人件費・謝金分も次年度分に振り分けることにしたため。また、一部、年度末納品等にかかる支払いが平成30年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。
(使用計画) 申請時の計画を着実に履行するため、ウイルスの遺伝子配列決定、定量実験等の高額な分子生物学的実験の費用に充てる予定である。
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