研究課題/領域番号 |
16K08263
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
佐々木 紀彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (80639063)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 炎症 / 糖脂質 / 透過性 / 接着性 |
研究実績の概要 |
肥満が増加する中年層から高齢層にかけて生体内では炎症が増加し、動脈硬化を始めとする血管疾患の発症、進展に関わると考えられるが、詳しい分子メカニズムは不明である。29年度では、主要な炎症性サイトカインであるTNFαの作用に着目した研究を行い、炎症に伴う血管のインスリン抵抗性にGM1が関わることを明らかにした。30年度では、引き続きTNFαの作用に着目し、血管内皮細胞におけるGM1の機能的検証を行った。まず、内皮機能として、血管の透過性について検討した。大動脈血管内皮細胞または冠動脈血管内皮細胞を用いて透過性を検討した結果、TNFαによる透過性の亢進が、糖脂質の合成阻害剤により減弱することを見出した。透過性の亢進にGM1が関わっているかは不明である。また、透過性に関与するVE-cadherinの発現性については、TNFαおよび糖脂質合成阻害剤で表面発現量に違いはなかったが、膜表面での分布に違いが見られた。また、電子顕微鏡による細胞形態および細胞間の微細な観察を行った結果、少なくともTNFαや糖脂質合成阻害剤の処理で形態に変化がみられることがわかった。以上より、TNFαによる血管の透過性亢進には、GM1を含む糖脂質の発現が関係している可能性が考えられた。さらに、内皮機能として、内皮細胞の接着性について検討した。大動脈血管内皮細胞または冠動脈血管内皮細胞を用いて接着性を検討した結果、TNFαによるU937細胞の内皮への接着性の増加が、予想に反し糖脂質合成阻害剤で促進することを見出した。この促進には、ガングリオシドの一つの発現性が接着分子のICAM1の発現を制御することで関わっている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画にある①血管の加齢や老化と関連するGM1 の発現制御について、および②血管内皮細胞におけるGM1 の機能的検証においては、研究実績の通り、炎症による発現制御とインスリン抵抗性に関して結果を得た。また、計画①にあるように、GM1の発現性に血管部位の特異性があるかに関しては、概要のように内皮の種類による違いが見出せた。内皮機能との関連については、30年度の実績に記載の通り、GM1を含むガングリオシドの関わりを見出した。 しかしながら、研究計画の後半については進んでいないため、やや遅れていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
期間内に研究目的を遂行させるため、今後は以下のような推進方策で研究を行う。 研究計画に記載した、②血管内皮細胞におけるGM1 の機能的検証においては、部位の異なる血管内皮細胞でのGM1の発現性と内皮機能について、昨年度明らかにした炎症との関連で研究をさらに行う。 また、研究計画に記載した、血管の加齢や老化と関連するGM1 の自己分泌的あるいは傍分泌的作用についての検討においては、加齢や老化、または炎症刺激を受けた血管内皮細胞から培養上清中の液性因子を調製し、由来部位の異なる血管内皮細胞に対する作用について検討していく。主にGM1と接着分子の発現や局在性に注目し、内皮機能との関連性を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金の採択が半年遅れの10月であったため、申請内容の研究を達成し、論文投稿するためには、さらに追加実験のための期間が必要である。また、4月初めに海外の学会に参加するための費用が必要である。これらの理由のため、延長を希望した。
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