研究課題
これまでに,シグマ1 (σ1)受容体とセロトニン(5-HT)1A 受容体の機能的相互作用による前頭葉ドパミン遊離増強にGABAA受容体の機能低下状態が必須であることを明らかにし,またGABAA受容体機能低下時にみられるような意欲障害が,両受容体の相互作用により改善されることを見出してきた.本年度ではさらに,GABAA 受容体アンタゴニストであるピクロトキシンによる社会性行動の低下や明暗試験及び高架式十字迷路試験での不安様行動の増加が,σ1受容体アゴニスト作用を有するフルボキサミンによって改善されること,そしてσ1受容体に作用しないパロキセチンでは影響はみられないことを明らかにした.以上の結果から,σ1と5-HT1A受容体の機能的相互作用の発現が,より普遍的にGABAA受容体機能の低下による脳機能障害を改善させることを示した.また前年度において,σ1受容体と5-HT1A 受容体の細胞内シグナルにおける相互作用を解析するため,ドパミン系神経モデル細胞として汎用されるヒトSH-SY5Y細胞を用いて,細胞内カルシウム濃度変化を指標に両受容体機能の評価系を構築した.しかしながらこのin vitroモデルでは,σ1受容体アゴニストSKF-10,047と5-HT1A 受容体アゴニスト8-OH-DPATの共処置を行っても,両アゴニスト単独による細胞内カルシウム濃度増加以上の増強はみられなかった.またラット副腎褐色細胞腫PC12細胞を用いて,遊離ドパミン量(basalおよび高カリウム刺激)に対するSKF-10,047,8-OH-DPATの作用を検討したが,両薬物単独ならびに併用処置ともに影響はみられなかった.以上からin vitroにおいては,in vivoを反映するようなσ1受容体と5-HT1A受容体間の機能的相互作用はみられず,脳内での複雑な神経回路機構が関与していることが示唆された.
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Pharmacology, Biochemistry, and Behavior
巻: 176 ページ: 1-5
10.1016/j.pbb.2018.11.003
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 10454
10.1038/s41598-018-28803-1
Biological & Pharmaceutical Bulletin
巻: 41 ページ: 1866-1869
10.1248/bpb.b18-00055
医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス
巻: 49 ページ: 550-556
http://www.phs.osaka-u.ac.jp/homepage/b011/