研究課題
現在臨床で使用されている抗うつ薬の治療効果には、脳内の神経栄養因子が一部関与している可能性が考えられている。申請者らのこれまでの研究から、抗うつ薬アミトリプチリンによる神経栄養因子の増加にはGi/o共役型リゾフォスファチジン酸(LPA)受容体シグナルを介したマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase 9: MMP-9)の活性増加が重要な役割を果たしていることを明らかとしている。そこで本年度は、三環系抗うつ薬アミトリプチリンで確認された作用が、アミトリプチリンだけでなく異なる作用機序を有する抗うつ薬でも同様に見られるか明らかにするために、ミルタザピン(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)のアストログリア細胞における神経栄養因子産生作用とそのメカニズムについて検討を行った。この研究結果は英文学術誌に投稿し現在査読中である。さらに、抗うつ薬のin vivoにおける作用を検討するために、神経障害性疼痛誘発性うつモデルマウスの作製を行った。この研究結果は査読付英文学術誌に掲載された。本年度は以下の成果を得た。1、アストログリア細胞(ラット大脳皮質初代培養アストロサイト、ラットアストログリア由来C6細胞)において、抗うつ薬ミルタザピンが神経栄養因子(BDNF、GDNF)の発現増加を誘導することを薬理学的手法で明らかにした。2、アストログリア細胞において、抗うつ薬ミルタザピンによる神経栄養因子の発現を誘導するメカニズムとして、Gi/o共役型LPA受容体とERKの活性化が関与することを明らかにした。3、神経障害性疼痛誘発性うつモデルマウスを作製し、表現的構成的妥当性を兼ね備えたモデル動物であることを確認した。4、神経障害性疼痛誘発性うつモデルマウスの前頭前皮質において、MMPの機能と関連する炎症性サイトカインの発現増加を確認した。
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Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.
巻: 92 ページ: 347-362
10.1016/j.pnpbp.2019.02.005.