研究実績の概要 |
肥満発症の原因として抗肥満因子である「レプチン」が効きにくくなること、すなわち「レプチン抵抗性」の形成が関わることが示唆されている。しかし、その形成機構については不明な点が多く残されている(Science 2000, 299:856)。私達は、レプチン抵抗性形成機構に小胞体ストレスが関わる可能性を示してきた(Mol. Pharmacol., 2008)。肥満においては、脂肪酸の増加が認められる。そこで、今回、肥満で増加が認められる脂肪酸が小胞体ストレス・レプチン抵抗性を引き起こす可能性についての検討を試みた。飽和脂肪酸は小胞体ストレスを惹起する一方、不飽和脂肪酸は小胞体ストレスを惹起しない(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2006 291:E275-81.)。そこで、膜の脂肪酸が飽和化することで神経細胞におけるレプチンシグナルが抑制されるのではないかと考え、飽和脂肪酸をモノ不飽和脂肪酸にする酵素であるSteraroyl-CoA desaturase1 (SCD1) に着目し、検討を試みた。検討の結果、SCD1阻害薬処理並びにsiRNAによるSCD1ノックダウンによりレプチンシグナルが抑制されることが明らかになった。従って、神経細胞におけるSCD1が、レプチン抵抗性さらには肥満の発症に関わる可能性が示唆された。さらに、SCD1低下による膜の脂肪酸の飽和化がレプチン抵抗性形成に関わる可能性も示唆された。
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