研究課題
肥満は糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の主な危険因子であり、肥満発症機構の解明は、その治療もしくは予防薬開発において重要と考えられる。レプチンは、主に脳内の神経細胞に作用して摂食抑制効果を示すことで抗肥満作用を起こす。近年、肥満発症の原因の一つとしてレプチンが効きにくくなる状態、すなわちレプチン抵抗性が関わることが示唆されている。本研究では、脳内における細胞間コミュニケーション、特にグリアーニューロンインターラクションのレプチンシグナル伝達に及ぼす影響を明らかにすることでレプチン抵抗性の病態ならびに改善因子の解明を目指した。検討の結果、グリア細胞由来の分泌因子を神経細胞に処置すると神経細胞におけるレプチンシグナルが増強されることが示された。従って、グリア細胞は神経細胞におけるレプチンシグナル増強因子を分泌している可能性が考えられた。そこで、その因子について検討したところ、IFN-γ処置により、神経細胞におけるレプチンシグナルが増強することが示された。すなわち、レプチンによって誘導されるSTAT3のリン酸化がIFN-γ処置により増強されることが明らかになった。一方、IFN-γシグナル伝達経路の下流で惹起されるSTAT1のリン酸化レベルは、IFN-γ単独処理と比べてIFN-γとレプチンとの共刺激では大きな違いは認められなかった。従って、IFN-γはレプチンシグナルに対する増強因子の一つである可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
脳内におけるレプチンシグナル伝達機構について検討した結果、細胞間コミュニケーション、特にグリアーニューロンインターラクションがレプチンシグナル伝達に重要な役割を担う可能性が示された。また、レプチンシグナル伝達に関わるグリア由来因子候補分子の一つの可能性を示すことができ、おおむね順調に進展していると考えられた。
引き続きレプチンシグナルに関わる因子の解明を行いつつ、肥満と密接に関わる糖尿病に関する研究テーマについても取り組む。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件)
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