近年、小胞体におけるタンパク質の折り畳みに問題が起きることによって生じる小胞体ストレスが様々な疾患発症の原因となる可能性が示唆され注目されている。現在までに私たちは、小胞体ストレスがレプチン抵抗性による肥満発症に関わる可能性を示してきた。さらに、非ステロイド性抗炎症薬として知られるフルルビプロフェンが小胞体ストレス軽減効果を有し、肥満を抑制する可能性を示してきた。一方、糖尿病も小胞体ストレスが原因となる可能性が示されていることより、今回、フルルビプロフェンが糖尿病に対しても有効性を示す可能性を検討した。まず、膵臓βモデル細胞であるMIN6細胞においてフルルビプロフェンの小胞体ストレス応答に対する作用を検討した。その結果、フルルビプロフェンは小胞体ストレスによるC/EBP homologous protein (CHOP) 誘導に対して抑制効果を示すことが示された。そこで次に、フルルビプロフェンのin vivoにおける効果を検討する目的でdb/db糖尿病モデルマウスを用いて検討を行った。その結果、db/db糖尿病モデルマウスにおけるグルコース負荷試験の結果、フルルビプロフェンは血糖値を下げる効果を示す可能性が示された。さらに、フルルビプロフェンは、db/db糖尿病モデルマウスで低下した血液中におけるインスリンレベルを有意に回復させることも示された。従ってフルルビプロフェンは小胞体ストレス軽減効果を有し、糖尿病に対して有効性を示す可能性が示された。以上よりフルルビプロフェンは小胞体ストレスによる生活習慣病発症に対して有効性を示す可能性が示された。
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