研究課題
身体運動が健康の維持増進に効果的であることは一般的にもよく知られている。我々を含む近年の多くの研究により、運動療法によるメタボリックシンドローム改善の分子機序として5'AMP-activated protein kinase (AMPK) の重要性が明らかとなり、糖尿病など多様な代謝疾患に対する良好な創薬標的の一つと考えられている。これまでの研究により、AMPKの活性調節機構として、αサブユニットThr172残基のリン酸化の重要性が示されてきたが、我々の検討ではこのリン酸化状態と活性の乖離例が多く認められた。そこで、本研究では新規代謝疾患治療法の確立と創薬を目指し、AMPK翻訳後修飾による新たな活性制御機構の解明を試みた。我々はAMPK翻訳後修飾の応答性を多数検討する中で食餌性の刺激によりリン酸化状態が変化する修飾部位を新たに見出した。培養細胞系ならびに、マウス等の実験動物を用いたこれまでの検討により、食餌性の刺激が内分泌性の因子を介し、上述のThr172残基とは独立してこのリン酸化部位を修飾すること、およびその細胞間、細胞内情報伝達の分子機構が明らかとなった。このことにより、AMPKが身体運動と食事というそれぞれ異なる生理学的刺激による代謝制御シグナルがクロストークする場として機能していることが解明された。さらに、本修飾部位付近の構造を用いた遺伝子改変分子の分子生物学的解析により、本修飾もしくは周辺の部分構造が細胞の生存に対して重要な機能を担う可能性が示唆された。さらに、AMPK活性に対し変調作用を有する一連の新規化合物を見出し、類似骨格の化合物に対するスクリーニングを行うとともに、新規代謝疾患治療薬、運動療法模倣薬の創薬に向けたリード化合物の構造展開を進めている。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
J Med Invest
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