研究課題/領域番号 |
16K08274
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
浅井 将 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (90383223)
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研究分担者 |
岩田 修永 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70246213)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダウン症 / アルツハイマー病 / ネプリライシン / DYRK1A / リン酸化 / 21番染色体 |
研究実績の概要 |
21番染色体がトリソミーとなっているダウン症患者は早期から脳内にアミロイドβペプチド(Aβ)が沈着し、アルツハイマー病様の病理を呈する。ダウン症責任領域に存在する二重特異性チロシンリン酸化調節キナーゼ1A(dual-specificity tyrosine-(Y)-phosphorylation-regulated kinase 1A, DYRK1A)の過剰発現は、Aβの主要分解酵素であるネプリライシンを制御し、ダウン症患者におけるAβ分解系の低下を介したAβ蓄積の誘因となり得る。 DYRK1Aはアルツハイマー病関連分子でタウや、Aβの前駆体タンパク質であるAPP(amyloid precursor protein)、Aβ産生を担うプレセニリン1をリン酸化することが報告されていることから、DYRK1Aによるネプリライシンの細胞内領域のリン酸化を詳細に解析した。神経系株化細胞にDYRK1Aを過剰発現させリン酸化特異的抗体を用いたウェスタンブロット解析によって、ネプリライシンの6番目のSer、15番目のThr、25番目のThrのリン酸化が亢進した。さらに、リコンビナントDYRK1Aとネプリライシンの細胞内領域の合成ペプチドを用いたin vitroキナーゼアッセイによって、11番目、15番目、25番目のThrの直接的なリン酸化が確認された。 本研究から、DYRK1Aはネプリライシンの15番目、25番目のThrを直接リン酸化すること、また6番目のSerについては他のキナーゼを介したプライミングキナーゼとしての作用であることが示唆された。 またDYRK1Aはアルツハイマー病に対して増悪因子であることから、その阻害剤は有用な治療薬となり得る。そこで、DYRK1A阻害剤のスクリーニングを行うためにAlphaLISAを利用した実験系の確立を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DYRK1Aによるネプリライシンのリン酸化部位を培養細胞およびin vitroでの試験管の実験系で同定し、AlphaLISAを利用したDYRK1A阻害剤のスクリーニング系の立ち上げの目処が立ったため。
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今後の研究の推進方策 |
・DYRK1Aのノックダウンや薬理学阻害によるネプリライシン活性の解析 DYRK1AのsiRNAを用いたノックダウンや既存の阻害剤を用いた薬理的作用によってDYRK1Aのキナーゼ活性阻害位を行い、その際の培養上清中のAβ量をサンドイッチELISAで定量する。またAβ量とネプリライシン活性の相関を解析する。 ・DYRK1Aによるネプリライシンのリン酸化阻害化合物のスクリーニング リコンビナントDYRK1Aおよびネプリライシンの細胞内領域にビオチンを付加した合成ペプチドを用いたAlphaLISAによるDYRK1Aの阻害化合物のスクリーニング系を確立し、化合物ライブラリーから新規DYRK1A阻害剤のスクリーニングを行う。 スクリーニングでヒットした化合物処理による培養細胞系でのネプリライシンのリン酸化、活性、発現を解析し、既存の阻害剤と比較する。
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備考 |
長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科生命薬科学専攻 分子創薬科学講座ゲノム創薬学研究室ホームページ http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/biotech/index-j.html
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