研究課題/領域番号 |
16K08276
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
関 貴弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (50335650)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脊髄小脳失調症 / 脂肪滴 |
研究実績の概要 |
前年度は脊髄小脳失調症21型(SCA21)の原因である変異TMEM240を発現した細胞において、中性脂肪の貯蔵体である脂肪滴が減少することを見出した。この脂肪滴に対する変化が別の遺伝子変異が原因で起こるSCAでも観察されるかを検討するため、幾つかのSCA原因タンパク質をHeLa細胞に発現させ、脂肪滴数の観察を行った。まず、脂肪酸の炭素鎖伸長に関わるELOVL4及びELOVL5の遺伝子変異がそれぞれSCA34及びSCA38の原因であることが特定されているため、これらについて解析を行った。野生型ELOVL4及びELOVL5を発現させた細胞では有意な脂肪滴の増加が観察された。一方、SCA34変異型ELOVL4を発現させた細胞では脂肪滴の数が非発現細胞よりも減少していた。SCA38変異型ELOVL5を発現する細胞の脂肪滴は非発現細胞と同様であった。続いて、SCA3の原因である変異ataxin-3についても同様の検討を行った。野生型ataxin-3を発現により、脂肪滴の数に変化は見られなかった。ポリグルタミン鎖が異常に伸長したSCA3変異ataxin-3を培養細胞に発現させると、一部の細胞では細胞質で凝集体を形成していた。凝集体を形成していない変異ataxin-3発現細胞では脂肪滴の数は非発現細胞と同様であったが、凝集体が観察された細胞では脂肪滴の数が顕著に減少していた。以上の結果から、検討したSCA原因タンパク質を発現する細胞では共通して脂肪滴が減少する傾向が観察された。この結果はSCAの共通の発症機序に脂肪代謝の異常が関わる可能性を提示するものである。 また、SCA21変異TMEM240をアデノ随伴ウイルスベクターを用いて小脳神経細胞に遺伝子導入することで、進行性の運動機能障害を引き起こすSCA21モデルマウスの作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初代培養神経細胞に対するSCA原因タンパク質の影響の検討が現状ではできていないものの、様々なSCA原因タンパク質が脂肪的に及ぼす影響まで解明できており、SCA21についてはモデルマウスの作製も成功しているため、おおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初代培養細胞を用いた検討やSCA21以外のモデルマウス作製については、いくつかのSCA原因タンパク質を発現させるアデノ随伴ウイルスベクターを既に作製しているため、SCA21以外のものについても初代培養におけるプルキンエ細胞形態異常やマウスにおける運動機能障害が引き起こされるかを検討する。SCA21については、細胞内の脂質に影響する処置が初代培養での神経形態異常やマウスにおける運動機能障害を改善するかを検討していく予定である。
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