研究課題/領域番号 |
16K08278
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山村 寿男 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (80398362)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 門脈圧亢進症 / クロライドチャネル / 肝硬変 / カルシウム / 門脈 / 平滑筋 / アンジオテンシンⅡ / ビリルビン |
研究実績の概要 |
胆汁鬱滞性の肝硬変を起こし、門脈圧亢進症を発症させる胆管結紮(BDL)マウスの門脈平滑筋では、カルシウム活性化クロライドチャネルを構成するTMEM16Aの発現が50%まで低下していた。それに対応して、カルシウム活性化クロライド電流は減少し、TMEM16A感受性の収縮成分も低下していた。しかし、BDLマウス門脈平滑筋におけるTMEM16A発現低下の分子機構については不明であった。当該年度において、門脈部分結紮(PPVL)によって、BDLマウスとは病因の異なる門脈圧亢進症モデルマウス(特発性門脈圧亢進症モデル)を作製し、両者を比較解析することで、BDLマウス門脈平滑筋におけるTMEM16A発現低下機構を解明することを目指した。BDLマウスの門脈平滑筋とは異なり、PPVLマウスにおいて、TMEM16Aの機能発現に変化が認められなかったことから、肝臓の線維化がTMEM16Aの機能発現低下に関与していることが示唆された。肝臓の障害時に生体内濃度が上昇する物質としてビリルビンとアンジオテンシンⅡに注目した結果、ビリルビンはTMEM16Aの機能を直接的(非ゲノム的)に抑制した。一方、アンジオテンシンⅡは発現調節機構を介してTMEM16Aの機能を間接的(ゲノム的)に抑制することも分かった。血管平滑筋におけるカルシウム活性化クロライドチャネル機能発現は、細胞膜の脱分極を介し血管収縮をもたらすことから、TMEM16Aの発現低下は門脈圧亢進症の悪化に対して抑制的に働くことが考えられる。本研究で得られた知見は、門脈圧亢進症における病態形成機構の解明につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝硬変由来門脈圧亢進症マウスの門脈平滑筋で認められたカルシウム活性化クロライドチャネル分子TMEM16Aの発現低下の分子機構の一部を解明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
肝硬変由来門脈圧亢進症マウスの門脈平滑筋で発現低下するカルシウム活性化クロライドチャネルTMEM16Aの発現調節機構の詳細を解明する。特に、カルシウム濃度依存性の下流シグナル経路であるMAPKカスケードに関連した分子(ERK、p38、JNK)の発現量およびリン酸化量について網羅的に解析する。また、MAPK経路に特有の転写因子であるc-Fos/c-Jun複合体のAP-1などの発現解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会旅費が削減できた。これは、学会旅費を大学費で充填することができたことと、毎年学会旅費の多くを占める薬理学会年会が当該年度は開催されなかったことが大きかった。しかし、当該年度に開催されなかった薬理学会年会は、国際薬理・臨床薬理学会(WCP2018)として次年度7月に開催され、かつ年度末には、通常の薬理学会年会が開催されるため、当初の予定以上の旅費を使用すると思われる。
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