研究課題
これまでの検討より、パーキンソン病患者 (PARK2) iPS 細胞由来ドパミン神経細胞において、エピジェネティック修飾を伴ったカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ (COMT) の著明な発現増加が明らかとなった。こうしたドパミン神経細胞における COMT 発現亢進に伴った器質的あるいは機能的変化を抽出する目的として、FLEX switch システムにより COMT を発現させるアデノ随伴ウイルスベクター (AAV) の作製を試みた。Tyrosine hydroxylase (TH)-Cre マウスの両側黒質に Cre 酵素依存的にCOMT を発現させる AAVを微量注入し、錐体外路障害について検討を行ったところ、微量注入後 7 週間を経過しても大きな変化は認められなかった。そこで、黒質ドパミン神経細胞における COMT の過剰発現が、ドパミン神経の機能的変化に関わるか否か検討する目的で、中脳ドパミン神経を活性化するモルヒネを末梢投与することによる線条体におけるドパミンの遊離量ならびにドパミン関連行動の変化について検討を行ったところ、黒質ドパミン神経細胞にCOMT を過剰発現させることにより、モルヒネ誘発自発運動量の有意な抑制ならびに線条体におけるドパミン遊離量の低下が認められた。以上の結果より、パーキンソン病態下における黒質-線条体ドパミン神経細胞における COMT の発現増加は、ドパミン関連行動の低下に関与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
領域特異的に標的遺伝子の発現制御を行う目的で、flex switch システムに基づいた発現ベクターの構築を昨年度より行っていたため、今年度は、TH-Creマウスの黒質にアデノ随伴ウイルスベクターをマイクロインジェクションすることにより、TH promoter の下流に目的遺伝子を発現させ、in vivo における表現系解析を行うことができた。このような背景より、目的の解析を順調に行うことができた。
中脳ドパミン神経細胞においても不均一性が報告されていることから、今後は、TH-Cre マウスのみならず、DAT-Cre マウスを用いて、同様の検討を行う。また、iPS 細胞由来ドパミン神経細胞において、COMT の過剰発現がドパミン神経細胞の脆弱性に関わるか否か検討を行う。さらには、パーキンソン病態における COMT 遺伝子の DNA 脱メチル化の経時的変化の検討ならびに、DNA 脱メチル化メカニズムについても、DNA メチル化酵素の関与等について検討を行う。こうした検討を行うことにより、パーキンソン病態におけるドパミン神経脆弱性メカニズム解明の一助となると考えられる。
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