研究課題/領域番号 |
16K08286
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
高田 和幸 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (10434664)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβ / クリアランス / 骨髄細胞 / ミクログリア / 貪食 / 認知機能 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病病態における脳免疫細胞ミクログリアの役割が注目されている。その一つは、ミクログリアはアルツハイマー病の原因たんぱく質として知られるアミロイドβ(Aβ)を貪食除去して、脳内の恒常性維持に機能することである。これまでに我々は骨髄細胞をはじめとする幹細胞からミクログリア様のAβ貪食細胞を作製することに成功しており、本研究では、これらのミクログリア様細胞のin vivo脳内での動態や機能を解析することを目的としている。該当年度において、骨髄由来ミクログリア様Aβ貪食細胞をアルツハイマー病モデルマウス脳に移植して、脳内での動態と貪食機能や炎症性サイトカインの産生機能を解析した。その結果、移植した骨髄由来ミクログリア様Aβ貪食細胞は、脳内のAβ蓄積部位を認識して移動し、少なくとも2週間程度は脳内で生着して脳内のAβの貪食除去に働く事を見出した。また、この時、アルツハイマー病モデルマウスの認知機能障害が改善されることも分かった。一方、in vitroの解析において、骨髄由来ミクログリア様細胞は抗炎症性の性質を有しているが、リポポリサッカライドや炎症性サイトカインの刺激により、徐々に炎症性に傾くことが示唆された。しかしながらこの性質は、初代培養ミクログリアや腹腔内マクロファージよりも若干緩やかなものであった。以上の結果から、脳内へ骨髄由来ミクログリア様細胞を移植するとAβの除去さらには認知機能障害の改善に有効であることが示唆された。今後さらに末梢血幹細胞やiPS細胞からミクログリア様の細胞を作製し、同様の解析を行うことで、臨床応用へ近づける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
該当年度において、骨髄由来ミクログリア様Aβ貪食細胞のin vivo脳におけるAβ除去作用や脳内動態が示され、本研究の主な目的の一部が明らかとなり、さらに他の幹細胞を用いた臨床応用を目指した解析へとつながる重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
末梢血から採取できる造血幹細胞やiPS細胞からミクログリア様Aβ貪食細胞を作製し、同様の解析を開始している。今後さらにin vivo脳での解析を進め、アルツハイマー病に対する細胞治療戦略を評価する。さらに、末梢血からの脳内への細胞送達方法についても解析を進める。
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