研究課題/領域番号 |
16K08288
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
荻田 喜代一 摂南大学, 薬学部, 教授 (90169219)
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研究分担者 |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 准教授 (00411710)
山口 太郎 摂南大学, 薬学部, 助教 (30710701)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 難聴 / クロロゲン酸 / 内耳 / 有毛細胞 / 騒音 |
研究実績の概要 |
感音難聴は、高齢者に最も高頻度に発症する身体障害の一つとされており、大部分が内耳蝸牛障害に由来する。原因不明の突発性難聴やメニエール病を除くと、環境騒音による内耳障害の蓄積による進行性の聴力悪化であり、自覚する頃には補聴器や人工内耳治療に頼らざるを得ない状況となることが少なくない。この現状を打開するためには感音難聴に対する予防薬の開発が強く望まれている。本研究では、騒音反復曝露による感音難聴モデル動物を用いて、不可逆的な聴力損失に対するクロロゲン酸の効果について検討した。5-6週齢BALB/cCr雌性マウスに、騒音刺激(8 kHz、90 dB)を1日1回、1時間曝露し、この曝露を5日間反復した。クロロゲン酸(10 mg/kg)は、初回騒音曝露の3日前より最終騒音曝露日まで1日1回、経口投与した。聴力は、聴性脳幹反応を用いて測定した。初回騒音曝露1日後に蝸牛を摘出し、固定後、Myosin7a、CtBP2およびGluA2の免疫染色により内有毛細胞-らせん神経節細胞間シナプス数を解析した。騒音反復曝露は、曝露回数に依存して周波数12・20 kHzの聴力が悪化させた。この聴力の悪化は、最終曝露後にも自然回復しなかった。クロロゲン酸(10 mg/kg)投与は、騒音反復曝露による聴力の悪化を有意に軽減させた。また、騒音曝露1日後では、内有毛細胞-らせん神経節細胞間シナプス数が曝露前と比較して有意に減少したが、クロロゲン酸投与は騒音曝露誘発性のシナプス数の減少をほぼ完全に抑制した。以上の結果より、クロロゲン酸投与は、騒音曝露による不可逆的な聴力損失に対する聴力保護に有用であることが示唆される。また、本条件下で作製した騒音反復曝露による聴力低下メカニズムに、内有毛細胞-らせん神経節細胞間シナプスの減少が少なくとも一部は関与することが推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、クロロゲン酸が騒音性難聴の予防に有効であることが明らかとなったことに加えて、カルパイン阻害薬、クルクミンやコンドロイチン硫酸も難聴予防に有効であることも明らかにしている。また、そのメカニズムについても有益なデータを得ており、今年度中に論文作成に着手する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
クロロゲン酸、クルクミン、コンドロイチン硫酸、カルパイン阻害薬が騒音性難聴において予防効果を示すことが明らかとなり、そのメカニズムの探求を進めるとともに、老年性難聴に対する効果やそのメカニズムの解明を進める予定である。現在は、老年性難聴のモデル動物の作成に着手しており、ほぼ確立している。難聴は認知症の大きなリスクとなることが明らかとなっていることから老年性難聴への効果を精力的に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究活動は順調に遂行できたが、少額の次年度繰越が望ましいと考える。理由としては最終年度の支給額が少なくなるため、研究遂行のために少しでも繰越が望ましいと考える。
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