研究課題
IL-20サブファミリーであるIL-19、IL-20、IL-22、IL-24は、免疫系と上皮細胞間をつなぐ重要なサイトカインであることが示唆されている。しかしながら、アレルギー疾患にIL-20サブファミリーが実際どのような役割を果たしているかは不明である。本研究では、マウスのアトピー性皮膚炎モデルを用いてIL-20サブファミリーの役割を、中和抗体およびリコンビナントタンパク質を用いたin vivo実験を中心とした薬理学的解析により明らかにする。これにより、IL-20サブファミリーがアレルギー疾患における新規治療薬の開発ターゲットとなり得るか否かを検証する。これまでに、ダニ抗原をマウスの耳介に繰り返し3週間塗布すると耳が赤く腫れる病態モデルを作製してきた。本病態モデルを用いて、抗IL-22抗体を第1週に投与すると第2週の耳の腫れが抑制され、第3週では抑制されないことを明らかにした。そこで、本年度は抗IL-22抗体を第1週および第2週に投与して、第3週の耳の腫れが抑制されるか否か検討した。その結果、第2週は耳の腫れが抑制され、第3週では第2週における抑制の程度と比較して弱いが抑制が認められた。また、リコンビナントIL-22の本病態モデルへの投与は、day 0の投与で第2週の耳の腫れが増悪化し、第3週ではその増悪化は通常の腫れまでに回復していた。さらに、IL-22をday 2に投与するとday 0投与による第2週に認められた耳の腫れの増悪化は観察されなかった。本結果より、ダニ抗原により誘導される皮膚炎症状にIL-22が関与している可能性が示唆された。また、IL-22を外から投与した検討で皮膚炎症状が増悪化した結果より、IL-22の産生を誘導するような疾患が根底に存在する場合、皮膚炎症状が増悪化する可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
ダニ抗原により誘導される皮膚炎症状における、抗IL-22抗体の連続投与の効果を検討するとともに、リコンビナントIL-22の効果についても検討しており、おおむね順調に研究が進んでいると判断される。
ダニ抗原をマウスの耳介に繰り返し塗布することにより耳が赤く腫れあがる病態モデルを用いて、抗IL-22抗体の連続投与が炎症細胞の浸潤や表皮の肥厚(病理学的評価)に及ぼす影響について検討するとともに、リコンビナントIL-22の投与に関する検討についても同様に評価する予定である。さらに、これまでに本モデルの発症にはCD8陽性T細胞が関与していることを明らかにしており、CD8陽性T細胞がIL-22の産生に影響を及ぼすか、またIL-22がCD8陽性T細胞の浸潤に影響を及ぼすか検討する予定である。
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Eur J Pharmacol
巻: 812 ページ: 38-47
10.1016/j.ejphar.2017.06.037. Epub 2017 Jun 29.