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2017 年度 実施状況報告書

漢方エキス製剤の使用実態に基づく偽アルドステロン症のリスク因子の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K08293
研究機関筑波大学

研究代表者

本間 真人  筑波大学, 医学医療系, 教授 (90199589)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード偽アルドステロン症 / 抑肝散 / リスク因子 / 低アルブミン血症
研究実績の概要

抑肝散(YK)と抑肝散加陳皮半夏(YKCH)を服用している患者376名を対象に、偽アルドステロン症(偽ア症)の初期症状である低カリウム(K)血症のリスク因子について検討した。
対象患者70名(18.6%)でYK製剤投与開始37日(1-1600日)後に低K血症を認めた(発症群)。発症群は、低K血症を発症しなかった患者(非発症群)と比較して高齢であり(72.5±14.4 vs. 67.5±16.3歳)、YK(YKCHでない)を服用している割合(93.2% vs. 83.5%)及び減量せずに7.5g/日で投与している割合(69.2% vs. 55.9%)が有意に高かった(p<0.05)。また、発症群において、投与開始時の血清Alb値は非発症群と比較して有意に低く(3.6±0.7 vs. 3.9±0.6 g/dL, p<0.05)、低Alb血症(3.7 g/dL以下)の割合も発症群で有意に高かった(42.9% vs. 29.1%, p<0.05)。COX比例ハザードモデルを用いた解析より、低K血症の発症要因としてYKの投与(HR 3.75;95%CI 1.16-12.10)、低Alb血症(2.07;1.26-3.41)、減量せずに7.5g投与すること(1.83;1.05-3.19)、女性(1.64;1.01-2.68)、年齢(1.03;1.01-1.05)が明らかとなった。
偽ア症の発症リスクとして、一般的に高齢者、女性、投与量が知られているが、YK製剤の場合、YKの投与及び低Alb血症が関与していることを確認した。高齢者や低Alb血症を認める患者にYKを減量せずに投与する場合は、低K血症の発症に特に注意が必要と考えられた。また、同様の調査を芍薬甘草等についても開始しており、抑肝散との違いが明らかになりつつある。他の甘草含有漢方製剤については使用実態の推移を明らかにしており、同様な解析を進める漢方製剤の選択に利用したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

甘草含有漢方薬のうち使用頻度が高い抑肝散製剤についての検討は概ね順調に進んでいるが、その他の甘草含量製剤については使用頻度の調査にとどまっている。比較的が使用頻度が高い芍薬甘草湯については抑肝散とほぼ同等の症例数を確保し、そのデータの解析を進めている。芍薬甘草湯においては、偽アルドステロン症の発症要因として抑肝散とは若干異なるプロファイルであることを確認しつつある。
偽アルドステロン症の原因物質であるグリチルレチン酸の血中濃度測定については、現在、患者の血液検体を取集している段階であるが、症例の集積については認知症の患者を対象としていたため当初の予定より遅れている。また、測定機器に選択したLC-MSMS装置の不具合によりその修理が必要となった影響で測定法の開発が当初の予定より遅れている。

今後の研究の推進方策

本年度は、甘草含有漢方製剤の使用頻度の変遷を明らかにするとともに、芍薬甘草湯について偽アルドステロン症のリスク因子を後ろ向きに調査し、抑肝散との違いを明確にしたい。また、偽アルドステロン症の初期症状である低K血症の発症とグリチルレチン酸の血中濃度との関連について調査し、グリチルレチン酸濃度のTDM(治療薬物モニタリング)が甘草含有漢方製剤の適正使用に応用できるか否かについて検証したいと考えている。患者検体の収集が進んでいないので、現在、認知症患者に絞っている対象をその他の疾患にも拡大して取り組む予定である。グリチルレチン酸の血中濃度測定については、LC-MSMSだけでなく医療機関で汎用性の高い、簡便な測定法(HPLCやイムノアッセイなど)についても検討したい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Liquorice-induced hypokalaemia in patients treated with Yokukansan preparations: identification of the risk factors in a retrospective cohort study.2017

    • 著者名/発表者名
      Shimada S, Arai T, Tamaoka A, Homma M
    • 雑誌名

      BMJ Open.

      巻: 7 ページ: e014218

    • DOI

      10.1136/bmjopen-2016-014218.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Licorice-induced hypokalemia in patients treated with Yokukansan preparations ―identification of the risk factors in a retrospective cohort study―2017

    • 著者名/発表者名
      Shimada S, Arai T, Tamaoka A, Homma M.
    • 学会等名
      6th FIP Pharmaceutical Sciences World Congress 2017 (Stockholm)
    • 国際学会
  • [学会発表] 漢方薬の添付文書改訂の根拠となった副作用症例の解析(第3報):PMDAへの報告症例との比較2017

    • 著者名/発表者名
      飯塚史織, 嶋田沙織, 伊藤雅, 本間真人:
    • 学会等名
      第34回和漢医薬学会学術大会(福岡)
  • [学会発表] 抑肝酸エキス顆粒製剤を中止した症例の要因2017

    • 著者名/発表者名
      嶋田沙織, 新井哲明, 玉岡晃, 本間真人:
    • 学会等名
      日本東洋医学会関東甲信越支部第24回茨城県部会学術集会(つくば)
  • [学会発表] 低アルブミン血症は抑肝散製剤による低カリウム血症のリスク因子である(第2報)2017

    • 著者名/発表者名
      嶋田沙織, 新井哲明, 玉岡晃, 本間真人:
    • 学会等名
      第38回日本臨床薬理学会学術総会(横浜)
  • [備考] Liquorice-induced hypokalaemia

    • URL

      http://bmjopen.bmj.com/content/bmjopen/7/6/e014218.full.pdf

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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