研究課題/領域番号 |
16K08294
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
野田 正文 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 特任准教授 (40457289)
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研究分担者 |
杉山 政則 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 共同研究講座教授 (30106801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロバイオティクス / 腸内細菌叢 / アルコール |
研究実績の概要 |
本年度は新規乳酸菌株の分離を行うと共に、SN13T株生菌体を投与した場合に表現型として観察された、アルコール中毒症状の回避作用と結び付くようなバイオマーカーの探索を中心として研究を進めた。 まず、種々の薬用植物や果実より新たな乳酸菌の分離を試み、8株の乳酸菌株を分離・同定することができた。新たに分離した乳酸菌株を含め、SN13T株以外の菌株を用いて同様にアルコール中毒症状の回避作用に対する効果を動物実験により検討した。その結果、菌株により若干の違いは認められるものの、中毒症状の回避作用はSN13T株により特異的であることが明らかになった。 続いて、アルコール濃度を増減させ、濃度に応じたマウスにおける中毒症状の変化を評価した。低濃度では症状が起こらず、また一定濃度を超えた場合には、SN13T株の摂取の有無に関係無く、致死的な中毒症状が認められた。 アルコール中毒症状改善評価の指標を決定するため、バイオマーカーとして、モデルマウスより回収した血液中の炎症性サイトカインについて測定を行った。IL-1β, IL-6, IL-8, そしてIL-12の各サイトカインについて測定を行ったが、アルコール非摂取群も含め、特異的な変化は認められなかった。しかしながら、高濃度のアルコール摂取群においては、これまでの実験では認められなかった脾臓の委縮がアルコール摂取群に認められる一方で、SN13T株生菌体摂取群では抑制されていることが明らかとなり、中毒症状回避作用機序の解明に結び付く可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに分離した乳酸菌株を含め、SN13T株以外の菌株を用いて同様にアルコール中毒症状の回避作用に対する効果を動物実験により検討した結果、これまでに実験を行った限りにおいては、中毒症状の回避作用はSN13T株に最も特異的であることが明らかになった。 また、バイオマーカーとして、特異的に変化している炎症性サイトカインについて確認することはできなかったが、アルコール摂取濃度を変化させることにより、SN13T株生菌体の摂取によって改善される中毒作用のひとつとして、脾臓の委縮という現象を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
アルコール中毒症状の回避作用がSN13T株に最も特異的であることが明らかになったため、従って、今後の実験においてはSN13T株を引き続き用いることとし、作用機構の解明に注力することとする。 また、炎症性サイトカインについては、他のものについても継続して調査すると共に、体内や血液中の毒素成分や細菌群についても併せて検証する。 他については、研究計画に沿って引き続き実験を進める。
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