研究課題
アンフィジニウム属渦鞭毛藻からは現在までに、50種を超えるマクロリド化合物、20種あまりの長鎖ポリヒドロキシ化合物が単離されていたが、新規化合物産生株探索法や集約的な培養法を取り入れることで、新たに二次代謝産物群の発見に繋がった。さらに継続的に展開することで新たな医薬品のリードや生命現象に有用な試薬となり得る細胞増殖制御物質が得られる可能性が高い。本研究では、強力な殺細胞活性や抗腫瘍性を持つポリケチド化合物や、幹細胞等の正常細胞の増殖を促進するポリケチド化合物といった、細胞増殖を制御する新規代謝産物を探索し構造解析を行う。得られた新規化合物や顕著な細胞増殖活性を示すAmphirionin-4に関して、詳細な活性評価を行うとともに、薬理学的手法やケミカルバイオロジー手法により活性発現の標的分子と作用機序を解明する。(3)これらポリケチド化合物は、既存のポリケチド生合成経路では説明できないユニークな炭素骨格を有することから、安定同位体取込実験やポリケチド生合成酵素遺伝子の網羅的解析による生合成研究を検討する。以上の研究により、既存の抗がん剤とは化学構造が異なる新しいタイプの抗がん剤リードや再生医療に活用可能な幹細胞等の増殖促進物質の開発を目指すとともに、これまでほとんど未解明な渦鞭毛藻ポリケチド生合成機構の解析といった渦鞭毛藻代謝産物に関する総合的なケミカルバイオロジー研究を実施する。現在までに、西表島産のアンフィジニウム属海洋渦鞭毛藻KCA09053株より、2種の新規細胞増殖阻害物質イリオモテオリド-10aと12aを、同じくKCA09052株より新規細胞増殖阻害物質イリオモテオリド-9aと11aを単離し、それらの化学構造を明らかにしてきた。
2: おおむね順調に進展している
これまでに細胞増殖阻害を示す新規化合物4種を単離し、構造解析を実施し論文発表にすることができた。さらに現在構造解析を行なっている新規化合物が得られていることや、共同研究によって細胞増殖阻害物質や細胞増殖活性化物質の活性発現メカニズムの解析が進行している。また、アンフィジニウム属渦鞭毛藻の遺伝子解析を進めており、これら化合物の生合成経路の解明にも寄与することが期待される。
現在進めている新規化合物の構造解析を進めることで学術論文として発表することを鋭意進めるとともに、共同研究により実施している細胞増殖阻害物質や細胞増殖活性化物質の活性発現メカニズムの解析や、アンフィジニウム属渦鞭毛藻の遺伝子解析を進めていく。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Natural Medicines
巻: 71 ページ: 印刷中
DOI 10.1007/s11418-017-1080-y
Chemcal and Pharmaceutical Bulletin
巻: 64 ページ: 1016-1023
doi.org/10.1248/cpb.c16-00026