アンフィジニウム属渦鞭毛藻からは現在までに、50種を超えるマクロリド化合物、20種あまりの長鎖ポリヒドロキシ化合物が単離されていたが、新規化合物産生株探索法や集約的な培養法を取り入れることで、新たに二次代謝産物群の発見に繋がった。さらに継続的に展開することで新たな医薬品のリードや生命現象に有用な試薬となり得る細胞増殖制御物質が得られる可能性が高い。本研究では、強力な殺細胞活性や抗腫瘍性を持つポリケチド化合物や、幹細胞等の正常細胞の増殖を促進するポリケチド化合物といった、細胞増殖を制御する新規代謝産物を探索し構造解析を行う。得られた新規化合物や顕著な細胞増殖活性を示すAmphirionin-4に関して、詳細な活性評価を行うとともに、薬理学的手法やケミカルバイオロジー手法により活性発現の標的分子と作用機序を解明する。以上の研究により、既存の抗がん剤とは化学構造が異なる新しいタイプの抗がん剤リードや再生医療に活用可能な幹細胞等の増殖促進物質の開発を目指すとともに、これまでほとんど未解明な渦鞭毛藻ポリケチド生合成機構の解析といった渦鞭毛藻代謝産物に関する総合的なケミカルバイオロジー研究を実施する。 西表島産のアンフィジニウム属海洋渦鞭毛藻HYA024株より新規25員環マクロリド・イリオモテオリド-8aならびにアンフィリオニン-1を単離し、スペクトルデータの解析に基づいてそれらの構造を解析中である。 西表島産のアンフィジニウム属海洋渦鞭毛藻HYA024株より、強力な細胞増殖阻害を示す2種のマクロリドを単離した。一方の化合物は、既知化合物アンフィジノリドNならびにカリベノリドーIの両者と物理化学的性質がよく一致し、両化合物が同一物質であることが明らかとなった。もう一方の新規関連化合物の構造をスペクトルデータの詳細な解析に基づいて、相対立体配置を含む化学構造を帰属した。
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