研究課題/領域番号 |
16K08299
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤田 憲一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10285281)
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研究分担者 |
臼杵 克之助 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30244651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬剤排出ポンプ / フェニルプロパノイド / アネトール / クルクミン |
研究実績の概要 |
フェニルプロパノイド類は、ドデカノールやフルコナゾールなど含む他の薬剤と併用すると、多剤耐性薬剤排出ポンプの遺伝子発現抑制を介して相乗的かつ持続的な抗真菌作用を発揮する。アネトールは遺伝子発現抑制に加えて、細胞膜上にある薬剤排出ポンプの活性を抑制している可能性が示唆された。本物質群が非特異的に細胞膜および細胞膜上のタンパク質類に影響を与えている可能性があるため、本物質群が細胞膜障害作用を示すか、また細胞膜上の他のタンパク質H+-ATPaseの活性を抑制するのか検討した。その結果、本物質群は細胞膜障害作用を示さず、H+-ATPaseの活性も全く阻害していないことが判った。以上より、フェニルプロパノイド類は薬剤排出ポンプの活性だけを特異的に阻害している可能性が強く示唆された。
フェニルプロパノイド類と構造・物性が類似する物質としてウコンの根茎に含まれる脂溶性物質クルクミンが挙げられる。本物質は様々な生理活性を示す可能性が報告されている。しかしながら、微生物に対する活性についてはほとんど報告がなされていない。出芽酵母をクルクミンで単独処理した場合、その生育にはほとんど影響が見られなかったが、一過性の殺菌作用を示すドデカノールとクルクミンとを組み合わせた場合、相乗的な抗真菌作用を発揮すること、また、クルクミンは薬剤排出ポンプの活性を抑制していることがわかった。さらに、クルクミンが薬剤排出ポンプの遺伝子発現に影響するか検討した。その結果、ドデカノール処理することで 薬剤排出ポンプPDR5の発現量が増大するが、クルクミンを併用させるとその発現量が大幅に低下することが判明した。以上の結果より、クルクミンは出芽酵母の薬剤排出を抑制することでドデカノールの菌体外への排出を抑制し、相乗的抗真菌作用を示すことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種薬剤を用いて細胞膜障害作用やプロトンATPaseの活性を測定する実験がメインであったため、研究は順調に進んでいると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
昨年、4月に提出した計画通りに実験を進めていく予定である。実験材料として真核生物のモデル生物である出芽酵母および病原性酵母Candida albicansを用いる。細胞へダメージを与える薬剤のほとんどは、細胞に対して活性酸素種などの産生誘導をはじめとする何らかの酸化ストレスを与えることが知られている。酸化ストレスを与える可能性の高い薬剤を天然由来物も含めて多数準備する。但し、その産生レベル、活性酸素種の種類、攻撃するターゲットは薬剤毎に異なっている。主として蛍光プレートリーダーを用いて、種々のアッセイを行い、酸化ストレスの観点から薬剤を分類する。 ①細胞質全体における酸化ストレスの検出は細胞内グルタチオンを定量することで行う。②細胞内における活性酸素種の検出は、例えば、細胞膜透過性DCFH-DA、ミトコンドリア局在MitoAR、ニトロ化ストレス検出用NiSPY-3などの蛍光プローブで酵母を染色し、蛍光プレートリーダーで定量し、活性酸素種の種類、産生する場所やその産生レベルについて解析する。③ミトコンドリアの呼吸鎖は活性酸素の産生の主因となりうる。直接あるいは間接的な原因によっておこる呼吸阻害に依存して活性酸素が誘導される可能性がある。従って、薬剤が呼吸を阻害するかどうかを蛍光プローブ類を用いて酸素消費速度を測定し、判断する。また呼吸鎖が不全のため呼吸鎖由来の活性酸素の産生が認められないミトコンドリアDNA欠損株に薬剤が耐性かどうかで、酸化ストレスがミトコンドリア由来かどうかをバックアップ的に判断する。④細胞膜の過酸化ついては過酸化脂質と反応して蛍光物質となるDPPPを用いて、解析する。
以上の4つのアッセイで得られた結果を統合することによって、薬剤による酸化ストレス(活性酸素種)の種類、発生場所、その強さを的確に把握することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究うち合わせのため、アメリカへ出張した際、旅費は本予算ではなく、別の予算で執行したため、アメリカ出張のために確保しておいた予算が使われずに残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度に国際学会で発表すべく準備中である。
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