研究課題/領域番号 |
16K08300
|
研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
伊東 秀之 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (70253002)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 腸内細菌 / Bifidobacterium longum / タンニン / エラジタンニン / corilagin / punicalagin / ザクロ / ゲンノショウコ |
研究実績の概要 |
ゲンノショウコは,日本三大民間薬の一つで整腸薬として古くから使用され,その整腸作用機序に関しては,腸の蠕動運動の制御や収斂性の強いタンニンが腸粘膜のタンパク質と結合することによって生じる腸粘膜の保護,抗炎症によるとされているが,腸内細菌への影響を含めて未だ明確な科学的基礎データが提供されていない。一方,特定保健用食品の中では,プロバイオティクスなどをはじめとするおなかの調子を整える食品が半数以上を占め,これらの評価は有用菌の増殖などを目標としている。本研究では有用菌の減衰期の挙動に着目し,有益菌の生存を維持させる新たな着眼点から研究を行っている。既にゲンノショウコ長時間煎液やその主成分であるcorilaginに,代表的な有用菌であるBifidobacterium longumに対する生存維持作用を有することを報告している。今回,さらに数多くの植物抽出サンプルについて,B. longum菌の生存維持作用スクリーニングを行った結果,ザクロアリルのミネラルや炭水化物を除去した画分に顕著な生存維持作用を有することを見出した。現在,各種カラムクロマトによる分画を行い,生存維持作用成分の特定を進めている。また,ヒトにおける代表的な有用菌であるLactobacillus gasseriについても同様に生存維持作用のスクリーニングを行い,活性を有する植物エキスおよび成分を探索している。一方,腸内細菌は,植物成分を代謝変換することにより,その代謝産物が宿主にとって有用に働き,また食中毒原因菌に対しては防御機能を示す可能性も十分考えられるために,当研究グループでは,ポリフェノールの代謝産物が活性本体である可能性を示唆するデータも報告しており,このような観点からも,さらに腸内代謝物も探索,化学構造を解明し,代謝産物についても腸内細菌に与える影響を評価することも重要と考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Bifidobacterium longumに対する生存維持作用スクリーニングについては順調に進んでいたが,活性成分の特定にまでは至っていない。複数の成分による相加または相乗作用の可能性も考えられるが,それらの作用の可能性も含めて明らかにしたい。
|
今後の研究の推進方策 |
Lactobacillus gasseri に対する生存維持作用も検討を加えると共に,さらにγ-aminobutyric acid (GABA) やポリアミン類を含めた短鎖脂肪酸の生成についても検討を加え,腸内有用菌の生存維持作用について広く評価を進める。
|